『風と共に去りぬ』(五)マーガレット・ミッチェル/岩波文庫2020-06-25

2020-06-25 當山日出夫(とうやまひでお)

風と共に去りぬ(5)

マーガレット・ミッチェル.荒このみ(訳).『風と共に去りぬ』(五)(岩波文庫).岩波書店.2015
https://www.iwanami.co.jp/book/b247597.html

続きである。
やまもも書斎記 2020年6月22日
『風と共に去りぬ』(四)マーガレット・ミッチェル/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/06/22/9260165

岩波文庫で五冊目まで読んで思うこととしては、次の二点を書いておきたい。

第一には、スカーレットの不撓不屈の精神。

不撓不屈というとちょっと大げさかもしれない。だが、タラの農園にかけられた税金を工面するために、アトランタにいるレット・バトラーをおとずれるくだり、そして、バトラーが頼りにならないとわかると、即座に、フランク・ケネディ……これは妹のスエレンの恋人でもあった……をうばってしまうところ、このあたりの、ある意味でのたくましさ、したかさは、この小説の読みどことのひとつだろうと思う。その後、製材所を経営することになるのだが、ここでも、女傑と言っていい働きぶりである。

南北戦争にやぶれた南部の女性として、不遇の時代をのりきって生きている。そのたくましさが、この小説におけるスカーレットの魅力だろう。

第二は、クークラックスクラン。

これが、どうもよくわからないところである。たぶん、日本の読者にとって、クークラックスクランとは何なのか、何をしていたのか、なぜ弾圧されることになったのか、よく分からないというのが正直なところである。また、この小説では、アシュリーも、夫のフランクも、この一員として活動していたことになっている。アシュリーのような、これまで読んできた印象では、穏健な思想の持ち主という印象であったが、なぜ、クークラックスクランにかかわることになったのか、このあたりよくわからないことでもある。

以上の二点が、五冊目を読んで思うことなどである。

さらに書いてみるならば、南北戦争がアメリカという国家、社会に何をもたらしたのか、そのあたりを描いた歴史小説として読むこともできるだろう。単に黒人奴隷の解放ということだけではなく、北部と南部と、白人と黒人と、富めるものと貧しいものと、それぞれの分断、対立ということも、結果として生み出したことになるようだ。(このあたりは、アメリカ社会の歴史にはうといので、そのように読めるということにとどまるのだが。)

ともあれ、この小説は、後半の部分……映画で後半とて描かれた部分……の方が、断然面白い。スカーレットを中心として、レット、アシュリー、メラニーといった登場人物たちの、人間ドラマが展開する。この小説を読むのは、四回目になるはずなのだが、それでも、思わず小説の世界の中にはいりこんで読みふけってしまうことに気付く。

残りは、一冊である。最後まで続けて読むことにしよう。

2020年6月3日記

追記 2020-06-26
この続きは、
やまもも書斎記 2020年6月26日
『風と共に去りぬ』(六)マーガレット・ミッチェル/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/06/26/9261716

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