『志賀直哉』(ちくま日本文学全集)2020-07-27

2020-07-27 當山日出夫(とうやまひでお)

志賀直哉

志賀直哉.『志賀直哉』(ちくま日本文学全集).ちくま書房.1992

この本は、今では売っていない。古本で買ったものである。現在では、「ちくま日本文学」四〇巻として、装いを新たに刊行されているものである。

志賀直哉については、最近では、新潮文庫版で短篇集を読んでいる。

やまもも書斎記 2020年6月13日
『清兵衛と瓢箪・網走まで』志賀直哉/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/06/13/9256935

やまもも書斎記 2020年6月19日
『小僧の神様・城の崎にて』志賀直哉/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/06/19/9259113

筑摩版で読んでおきたいと思ったのは、その本文校訂の違いを確認しておきたかったからである。見ておきたかったのは、「タ」「ト」の小書きの仮名。これが、新潮文庫の『清兵衛と瓢箪・網走まで』では、小さい仮名で印刷されているのに対して、同じ新潮文庫でも、『小僧の神様・城の崎にて』では、普通の大きさの仮名になっている。

これが、著者(志賀直哉)自身の表記法の変化によるものなのか、あるいは、文庫本に作るときの編集方針によるものなのか、気になった。近年の志賀直哉の刊行物ということで、筑摩書房版の本を見ることにした。

読んでみると、筑摩書房版では、全編にわたって、「タ」「ト」は小書きになっている。どうやら、新潮文庫の編集のときに改めたらしい。(ここは「全集」など確認すべきところであるのだが、今、大学の図書館が自由に使える状況にない。)

この小書きの仮名「タ」「ト」であるが、「ト」の方は、アイヌ語用の仮名ということで、JIS規格「0213」できまっている。今の普通のパソコンでも使うことができる。しかし、「タ」の方は、文字がない。

現代の出版物であっても、大正から昭和戦前の作品を刊行しようとすると、文字の問題があることになる。

それはともかく、ちくま日本文学全集版『志賀直哉』である。これは、ほぼ一気に読んでしまった。月並みな言い方だが、やはり、志賀直哉は、「小説の神様」と言われるだけのことはある。短篇である。そして、波瀾万丈のストーリーという類いの作品ではない。日常的に、普通の生活のなかで感じるような出来事が、淡々と描かれる作品が多い。

そのなかで、ドラマチックな筋立ての作品というと、「剃刀」とか「氾の犯罪」ぐらいが思い浮かぶところかもしれない。

「城の崎ににて」などは、小説ともエッセイともつかない、微妙なところになりたっている作品である。

やまもも書斎記 2016年6月23日
志賀直哉『城の崎にて』は小説か随筆か
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/06/23/8117250

どの作品も、面白い。いや、そうではなく、このような志賀直哉の小説……あるいはエッセイのような作品……を、面白いと感じるようになってきたということなのであろう。はっきりいって、若いときには、「小僧の神様」「清兵衛と瓢箪」など、それなりに面白く読んだという記憶はあるのだが、それほど志賀直哉の作品に傾倒するということはなかった。しかし、今になって読んでみると、どの作品も、しみじみと味わい深いものがある。

余生の楽しみの読書である。ちくま日本文学のシリーズなど、順番に読んでいってみようかと思っている。

2020年7月26日記