「太陽の子」あれこれ2020-08-17

2020-08-17 當山日出夫(とうやまひでお)

この夏において、NHKが一番力をいれて作ったかと思われるドラマの一つである。

見て思ったことなど書けば次の二点ぐらいだろうか。

第一には、科学の夢。

たとえその研究が原子爆弾だろうと……今の我々は、その結果を知っているのだが……その当時においては、原爆開発は、科学の夢であった。今日、科学にたずさわる人びとは、果たして科学にどのような夢をもっているのだろうか。夢をもってこその科学であることが、強く印象に残った。

第二には、その科学と社会。

科学も、その時代、社会、世界情勢と無縁ではない。純粋に知的営為としての科学もあり得るのかもしれないが、実際の世の中では、それがどう使われることになるのか、時代の流れのなかで位置づけられることになる。そして、原爆は、日本の戦争を終わらせることにはなった(ただ、このことについては、いろいろと評価の分かれるところのある議論である。)無論、その結果、悲惨な結果をもたらしたことも、今日のわれわれは知っている。

だが、その原爆に託された夢と、その結果と……これらから、科学は、純粋に独立してあり得るものなのであろうか。

以上の二点が、見ていて強く思ったことである。

歴史の結果としては、原爆を作ったのアメリカであった。そして、使用したのは、日本に対してであった。その結果については、言うまでもないことだろう。

その原爆を、日本でもまた開発していたことは、知られていることであるが、その詳細については、あまり広くは、知られていないといってもいいかもしれない。このあたりの事情を、このドラマは、細かく描いていたと思う。

それから、このドラマのもう一つの見どころは、戦争末期の時代の、人びとの暮らし。なかんずく、若い人びと……それが、大学の研究者であれ、兵士であれ、一般市民であれ……が、どのような思いで、その時代を生きたのか、ここのところが、哀切に描かれていたと思う。印象に残るのは、海辺でのシーン、それから、ゴンドラの唄。

戦争の時代を生きた若者のドラマとしても、心にせまるものがあった。

2020年8月16日記

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