『この世界の片隅に』(中)こうの史代2020-08-24

2020-08-24 當山日出夫(とうやまひでお)

この世界の片隅に(中)

こうの史代.『この世界の片隅に』(中).双葉社.2008
https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-94179-1.html?c=20108&o=&

続きである。
やまもも書斎記 2020年8月
『この世界の片隅に』(上)こうの史代
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/08/22/9280939

中巻である。昭和一九年から翌二〇年の春までが描かれる。

読んで印象に残るのは次の二点であろうか。

第一に、リンのこと。

街に出たすずは道に迷ってしまう。遊郭のなかに入り込むことになる。そこでリンと出会う。このリンとのことは、すずにとって忘れられない思い出になる。その後、妓楼をおとずれもし、また、春の花見のときにも出会っている。

このあたりのことは、映画では、かなり省略されてしまったところである。が、このリンとのエピソードが、すずの日常の生活に影をおとすことになる。日常生活の毎日のいとなみの愛おしさを描く、この作品において、やや異質なものがはいりこんでくる印象がある。しかし、それだけに、リンとのエピソードは、読んでいて印象に残る。

第二に、哲のこと。

青葉に乗艦していた幼なじみの哲が、すずの家にやってくる。一晩、泊まることになる。そこで、哲とすずは、親しく話しをすることになる。哲は語る……すずが普通に生活していることの大切さを、しみじみと語ることになる。

まさに、この作品は、戦時下という特殊な状況とはいえ、そこでの毎日の「普通」の生活がつづくことの意味を、細やかに描いているといっていいだろう。

以上の二点が、中巻を読んで思ったことなどである。

次は下巻になる。すずの負傷、広島の原爆投下、そして終戦を描くことになる。つづけて読むことにしようと思う。

2020年8月21日記

追記 2020-08-28
この続きは、
やまもも書斎記 2020年8月28日
『この世界の片隅に』(下)こうの史代
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/08/28/9289106

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