『三つの物語』フローベール/谷口亜沙子(訳)2020-09-10

2020-09-10 當山日出夫(とうやまひでお)

三つの物語

フローベール.谷口亜沙子(訳).『三つの物語』(光文社古典新訳文庫).光文社.2018
https://www.kotensinyaku.jp/books/book286/

この作品のことは知ってはいたが、読まずにきてしまった。光文社新書の『文学こそ最高の教養である』で、フローベールの作品としてとりあげられていた。これは読んでおかねばならないと思って読んだことになる。

やまもも書斎記 2020年7月20日
『文学こそ最高の教養である』光文社新書
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/07/20/9269900

この本を読んで、まだ読んでいない作品について、読んでみたくなっている。その一冊ということになる。

フローベールの最高傑作ということなのだが……いまひとつよく分からないというのが正直なところ。最初の「素朴なひと」は面白い。だが、つづく「聖ジュリアン伝」「ヘロディアス」になると、その作品の書かれた背景についての知識が乏しいせいか、はっきりいって味読するという感じにはならなかった。文庫本の解説を読んで、なるほどとは思うところはあるのだが。

そうはいっても、そう長くない短篇を連続して読んでみて、後にやはりなにがしかの文学的感銘というべきものを感じる。というよりも、今の視点で読んでみるならば、何かの寓意を持った作品という印象をもってしまう。

そして、この本は解説が充実している。この作品を読んでわけがわからないという印象をいだいたとしても、それは普通のことなのだと納得できる。その上で、この作品と、フローベールのフランス語の文章について、丁寧が説明となっている。この本は、まさにこの解説とともにあるべきだと強く感じる。

ここは、改めて解説を読んだ後に、再度、読みかえしておきたい作品である。

2020年9月9日記