『探偵さえいなければ』東川篤哉2020-09-12

2020-09-12 當山日出夫(とうやまひでお)

探偵さえいなければ

東川篤哉.『探偵さえいなければ』(光文社文庫).光文社.2020(光文社.2017)
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334779580

夏の暑い時期、気楽に読もうと思って買って、時間をかけて一話づつ読んでいった。途中、中断したときがあったりして、全部読むのにはかなりかかってしまった。

これは、まごうことなき「本格」である。東川篤哉は、そのデビュー作のときから読んでいる。その後、おりにふれて目にとまったら買って読むようにしてきている。現代ミステリにおいて、きっちりとした「本格」を書いている希な作家の一人であるという認識でいる。

「本格」であると同時に、特徴は、やはりユーモアであろう。どの作品にも、どことなくユーモアがただよっている。

事件がおこるのは、例によって、烏賊川市(いかがわし、これは架空の町)である。この烏賊川市を舞台にした作品ということでは、冒頭の「倉持和哉の二つのアリバイ」が面白い。このトリック、どこを舞台にしてもなりたつのだが、しかし、烏賊川市という町でおこってこそのミステリという印象がある。

東川篤哉は、年末恒例のミステリベストに名前が出てくるような作家ではないと思っているのだが、しかし、コンスタントに、ユーモアのある「本格」を出している。現代においては、希有なミステリ作家といっていいだろう。今後も、機会があれば、読んでおきたい作家のひとりである。古典を読む合間に手にするにはちょうどいい。

2020年9月11日記

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