『その裁きは死』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭(訳)2020-09-17

2020-09-17 當山日出夫(とうやまひでお)

その裁きは死

アンソニー・ホロヴィッツ.山田蘭(訳).『その裁きは死』(創元推理文庫).東京創元社.2020
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488265106

前作『メインテーマは殺人』の方は、出てすぐ買って積んであった。先日、ようやく読んだのだった。

やまもも書斎記 2020年9月4日
『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭(訳)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/09/04/9291983

こんど出た『その裁きは死』については、出てすぐに買って読むことにした。たぶん、今年の年末のミステリベストには必ずはいるだろうと思う。

基本的には、古典的とでもいうべきフーダニットのつくりになっている。まさにミステリの王道である。

設定は、『メインテーマは殺人』と同じ。「アンソニー・ホロヴィッツ」が、元刑事のホーソーンの事件解決の顛末を小説に書くということで、「ワトソン」役となっている。が、ここも前作と同様、ただ単なる「ワトソン」役であるのにとどまらず、事件の解明の段階では、一役かうことになっている。

私は、ミステリ好きではあるが、そんなに海外、特に英米のミステリ事情に詳しいということはない。まあ、「刑事フォイル」ぐらいは名前は知っている(ただ、テレビは見ていない。)この小説、虚実入りまぜて書いてあると思うのだが、どこが「実」で、どこからが「虚」なのか、今ひとつ判然としないのが、ちょっと残念な気がする。

小説の冒頭が、「刑事フォイル」のロンドンでのロケシーンからはじまるのは、読者サービスと思って読んでおけばいいのかもしれない。これがなくても、十分に小説としては成りたっているのだが、「刑事フォイル」の作者「アンソニー・ホロヴィッツ」ということが、この作品を、より面白いものにしている。

ところで、この『その裁きは死』のなかで語られることでは、このシリーズ……元刑事ホーソーンを主人公とする……は、三作を予定しているとのことである。また、文庫本の解説によると、作者(アンソニー・ホロヴィッツ)は、この「アンソニー・ホロヴィッツとホーソーン」のシリーズを、もっと書く予定であるようだ。

読んで思うことは、この小説の最大の謎は、「ホーソーン」という人物にある。なぜ、刑事を辞めることになったのか。そして、今は、いったい何をしているのか。どうにも、不可解なところが多々ある。それが、このシリーズの、狭義の推理小説以外のところにある、もう一つの大きな謎としてある。

さて、年末恒例のミステリベストで、この作品がどのように評価されることになるのか、楽しみである。

2020年9月13日記