『津軽通信』太宰治/新潮文庫2020-12-07

2020-12-07 當山日出夫(とうやまひでお)

津軽通信

太宰治.『津軽通信』(新潮文庫).新潮社.1982(2004.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100615/

続きである。
やまもも書斎記 2020年12月5日
『人間失格』太宰治/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/12/05/9323539

短篇をあつめてある。新潮文庫のこの本の位置づけとしては、初期の『晩年』から、戦後の『斜陽』『人間失格』『グッド・バイ』あたりまで、太宰治の作品を刊行してきて、それらの編集から残ったものを集めた補遺的なものという感じになるだろうか。初期のころから、晩年までの、短篇、掌編を収録してある。

読んで思うことは、この一冊のなかに、太宰治のエッセンスがつまっているという印象である。特に、『晩年』から『人間失格』にいたるまで、だいたい年代を追って読んできてから読むということもあるせいかもしないが、この本に太宰治の文学の巧さが凝縮されていると思う。

太宰治というと、『人間失格』が代表作とされることもあり、また、大きな位置づけとしては無頼派などと語られることもある。しかし、そのような評価とは別に、実に小説家として巧い。その巧さが、ごく短い作品……掌編といっていいだろう……において、いかんなく発揮される。太宰治の文学を読む楽しみがつまった一冊といってもいいかもしれない。

太宰治の小説の面白さというものは、もっと高く評価されてもいいのかもしれないと強く思う。

2020年12月6日記

追記 2020-12-10
この続きは、
やまもも書斎記 2020年12月10日
『もの思う葦』太宰治/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/12/10/9325276