NHK映像の世紀プレミアム「ナチス 狂気の集団」2020-12-14

2020-12-14 當山日出夫(とうやまひでお)

映像の世紀プレミアム(18)「ナチス 狂気の集団」
https://www4.nhk.or.jp/P4235/x/2020-12-12/10/25890/2899096/

12月12日の放送。録画しておいて翌日に見た。

見ていて思うことは多々ある。そのなかで思いつくことを書いてみる。

第一には、ゲッベルスの巧みさ。

この番組はナチスをもっぱら取り上げていた。その中心にいたのは、無論、ヒトラーである。だが、重要なのは、その周囲にいた人物たちであったかもしれない。その中でも、最も注目すべきは、宣伝大臣であったゲッベルスであろう。巧みなプロパガンダで、ナチスを作りあげていったといっていい。

今日の価値観からは、その行為は否定される。しかしながら、そのプロパガンダのテクニックは、今なお、研究の価値があるといわざるをえないだろう。なぜ、ナチスがあれほどのことをなしえたのか、プロパガンダによって人びとは何を思わされていくことになったのか、これはこれとして極めて興味深いところである。

第二には、普通の人びと。

確かにナチスは狂気の集団であったかもしれない。しかし、それに賛同し参加したのは、ごく普通の人びとであった。普通の人びとが、国家総力戦という名前のもとに、なぜ狂気としか思えない行動にしたがっていくことになったのか。

これは、一方的に、ナチスのプロパガンダの巧妙さに帰するだけではないと思う。そのような状況に置かれれば、普通の人びともまた、そうなってしまうということを、歴史の教訓として学び取っておくべきことにちがない。

強いて、教訓的なことを引き出そうとするならば……多様な意見の尊重、ということになるのかもしれない。社会、国家全体が、一つの「正しさ」にそめあげられていくとき、それとは異なる立場、意見が、どのように尊重されるべきか、これが最も重要なことの一つであると思う。

以上の二点が、この番組を見て思ったことなどである。

今回の放送では、日本のことがまったく出てこなかった。意図的にそのように編集しているのだろう。しかし、ヒトラーのドイツと共謀することになったは、戦前の日本であることは、れっきとした歴史的事実である。このことを忘れて、ただヒトラーとナチスの狂気を断罪するだけでは、意味がないともいえようか。

2020年12月13日記