『リベラリズムの終わり』萱野稔人2020-12-28

2020-12-28 當山日出夫(とうやまひでお)

リベラリズムの終わり

萱野稔人.『リベラリズムの終わり-その限界と未来-』(幻冬舎新書).幻冬舎.2019
https://www.gentosha.co.jp/book/b12748.html

たぶん、ここで書く今年最後の本になる。今読んでいるのは向田邦子の作品。今手に入るエッセイなど……文庫本で出ているもの……を、集中的に読んでいる。向田邦子については、年があらたまってから書いていこうと思う。

萱野稔人という人……哲学者……は、気になっている人の一人である。その書いていることに賛成か、そうでないか、判断しかねるところはあるのだが、その問題提起について、なるほどと同感するところが多い。

この本についてもそうである。このような議論からはじまる……同性婚を認めるならば、一夫多妻や一妻多夫も認めなければならなくなる、当事者の合意があり、誰に迷惑をかけるわけではないのであるから……この議論は、確かに読んでいてなるほどこのように考えることもできるのか、と感心した。「リベラル」という立場をつきつめていくならば、どこまでの自由を認めることになるのか、また、その主義主張はどれほど社会的に有効なものであるのか、ここのところを、つきつめて考えてある。

ただ、この本の後半の議論……人びとが分かち合うべきパイの大きさのこととか、『自由論』に言及したあたりになってくると、はっきりいって、私にはよく分からないというのが正直なところである。しかし、著者はその立場として真剣に議論していることは分かる。

私個人としては、かなりリベラルな立場でものを考える方かとは思っている。しかし、なぜそのように考えるのか、そして、その思考の行き着くところはどこで、どのような限界があるのか、あまり考えてみたことはない。この意味においては、リベラルにものを考えるとはどういうことなのか、いったん立ち止まって考えることになる。

COVID-19で明け暮れてしまった一年であったと思うが、このような中にあってこそ、ものを考えること、そしてその考えを追求していくことの重要性を、改めて感じている次第である。

2020年12月27日記