『JR高田馬場駅戸山口』柳美里2021-03-20

2021-03-20 當山日出夫(とうやまひでお)

JR高田馬場駅戸山口

柳美里.『JR高田馬場駅戸山口』(河出文庫).河出書房新社.2021(河出書房新社.2012 改題)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309418025/

この作品、以前に『グッドバイ・ママ』のタイトルで河出文庫で出ていたもの。それをタイトルを改めて、新たに出したものである。

柳美里という作家は、たしかに現代という時代を描いている作家だといえよう。この小説の登場人物……主にはその主人公である女性……に、共感できるかどうかは別にしても、ともかくこのような人間の生きている時代に、今の我々は生きているのだということを、この作品を読んで実感する。

都内で一人で子育てをしている女性。夫は単身赴任と遠方にいる。帰ってこない。子どもは幼稚園に通っている。その幼稚園の教育方針にいろいろと問題を感じる。また、住んでいる団地においても、自治会の人びとと軋轢がある。その他、住んで生活していくなかで、よくもこんなに問題点をあら探ししなくてもいいのにと思うほど、多くの問題に首をつっこんでいる。

あげくは、自分で自分を追い詰めていくことになってしまう。追い詰められた結果、主人公の女性は覚悟を決めたようだ。(が、その結末の一歩手前のところで、この小説は終わっている。このような終わり方があっても、これはこれで、一つの書き方だとは思う。)

ここで描かれているのは、まさに現代という時代、東京という都市で生活していくことの意味、といっていいのだろう。私は、この小説の主人公の女性に共感するところはない。しかし、ふとこの小説の物語の世界にひたって読んでいくことになる。小説としては、たくみである。特に、その文体がいい。ハットリ君を模した文体で、読者をひきつけていく。

JR駅のシリーズは、「上野」と「品川」は読んだ。これからも、たぶん河出文庫で、このシリーズが刊行になるのかと思う。順次、読んでいきたいと思う。

2021年3月19日記

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