『贖罪』イアン・マキューアン/小山太一(訳)2021-03-27

2021-03-27 當山日出夫(とうやまひでお)

贖罪

イアン・マキューアン.小山太一(訳).『贖罪』(新潮文庫).新潮社.2019(新潮社.2003)
https://www.shinchosha.co.jp/book/215725/

現代の英国文学の最高傑作と言われている作品である。文庫本で出た時に買ってつんであった。イアン・マキューアンは、読んでおきたいと思っている作家の一人。最新作『恋するアダム』を読もうと思って買って、その前に、この作品を確認しておくべきだと思って手にした。

(これは書いていいことだろうとおもうのだが)この作品、ミステリ用語でいう叙述トリックの作品である。叙述トリックというのは、作者と読者の関係は何なのか、作者とは何なのか、フィクションとは何であるのか……このような問いかけをふくんでいる。いいかえるならば、一九世紀的な、作者と読者の関係、神の視点からの人間描写ということを、うたがってみる視点をもつということでもある。

だからというべきか……私の場合、ミステリ大好き人間としては、特にこの作品の構造におどろくということはなかった。ただ、そうはいっても、文学作品として非常に巧みにつくってあり、また、文学的感銘の残る作品であることはたしかである。

私がこの作品を読んで感じたことは、近代の小説における「神の視点」ということである。そこに疑義をさしはさむというのではないが、もはや自明なものとして「神の視点」では、現代の小説は描けないということを、この作品は物語っているように思える。

二一世紀において、フィクションとしての小説がなりたつとしたならば、いったいどのようなところに可能なのか、そこのところを、この小説は問いかけているように思えたのである。

2021年3月24日記

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