『青天を衝け』あれこれ「栄一の祝言」2021-04-06

2021-04-06 當山日出夫(とうやまひでお)

『青天を衝け』第8回「栄一の祝言」
https://www.nhk.or.jp/seiten/story/08/

前回は、
やまもも書斎記 2021年3月30日
『青天を衝け』あれこれ「青天の栄一」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/30/9361951

この回で描いていたのは、栄一の結婚と、安政の大獄。ただ、ここまできても、栄一と慶喜の人生がまだまじわることはない。これは、もうちょっと先のことになるはずである。

第一に、栄一のこと。

栄一は、千代との結婚をかけて喜作と勝負することになる。試合としてはかろうじて喜作の勝ちだったが、結果としては、栄一は千代と結婚することになる。

喜作との剣の試合のシーン、それから、結婚式のシーンなどは、かなり念入りにつくってあったと感じる。初々しさを感じるなごやかな結婚式のシーンであった。

だが、栄一はまだ何者でもない。ただ、武州の農村にいる一人の若者にすぎない。

第二に、徳川幕府のこと。

井伊直弼が大老になり、安政の大獄がはじまることになる。このあたり、家定のいまわのきわの遺言でそうなったということだが、どうだろうか。幕末における、尊皇、佐幕、開国、攘夷……さまざまな論点が入り交じる時代の、虚々実々のかけひきがもうすこしあってもよかったように思う。

だが、結果としては、井伊大老による圧政のはじまりということになった。これを、慶喜は、よしとしているように見受けられる。

以上の二点が、この回で描いていた主なところだろうか。

ところで、たまたま、前日に放送のあった、「映像の世紀プレミアム 東京 破壊と創造の150年」を見ていたが……なかにかなり渋沢栄一の登場があった。これは、おそらくは、『青天を衝け』を意識してのことかもしれない。だが、その経済と道徳の一致という倫理観は、今の時代にもひびくものがある。渋沢栄一は、昭和になるまで生きている。明治から大正にかけて、日本の近代を生きた人物である。このドラマ、渋沢の明治以降の人生をどう描くことになるのだろうか。

そして今読んでいるのが、山田風太郎の明治小説。そのほとんどは、学生のころに読んでいるのだが、改めて読みなおしたくなって読んでいる。明治維新、近代という時代に光のあたるところで活躍する人物がいる一方で、影の部分に生きざるをえない、あるいは、あえてそのような人生を選んだ人間もいる。

明治という時代、近代という時代は、かならずしも、明るいものばかりではない。その歴史の敗残者とでもいうべき多くの人びとがいたことを、忘れてはならないだろう。

渋沢栄一は、ある意味で、近代日本の歴史の光の部分を歩んだ人物である。その人物を描くにあたって、影の部分にいることになる人びとのことをどう描くことになるのか、これもまたこのドラマで見てみたいところでもある。

次回は、桜田門外の変になるようだ。楽しみに見ることにしよう。

2021年4月5日記

追記 2021-04-13
この続きは、
やまもも書斎記 2021年4月13日
『青天を衝け』あれこれ「栄一と桜田門外の変」
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/04/13/9366728

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