『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき2021-06-17

2021-06-17 當山日出夫(とうやまひでお)

昨日がなければ明日もない

宮部みゆき.『昨日がなければ明日もない』(文春文庫).文藝春秋.2011(文藝春秋.2018)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167916855

おおむね、宮部みゆきの本は買って読むことにしている。これは、単行本が出たときに見逃していたようで、文庫本で出たので買った。

杉村三郎シリーズである。このシリーズは、この前作の『希望荘』から、がらりと設定が変わっている。まあ、私としては、以前の設定の杉村三郎シリーズも良かったと思っている。『希望荘』がいい作品だったので、これも読んでおくことにした。

三作品を収録する。

絶対零度
華燭
昨日がなければ明日もない

読んで、ミステリとしてよくできていると感じるのが、本のタイトルにもなっている「昨日がなければ明日もない」である。

ただ難点を強いていえば……最後のところで、ちょっと論理の飛躍がある。別に、何か事件が起こればそれでこの小説としては完結する。ここは無理に最悪の事件が起こったことにしてしまったように思えてならない。

この作品集全体を通じて流れているのは、現代における家族というものかもしれない。夫婦や親子さらには恋人同士の関係をふくめて、現代社会における家族の有りようを、多面的に描いている。やはり、宮部みゆきは、時代とその社会に生きる人間を描く作家である。

2021年5月31日記

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