『愛についてのデッサン』野呂邦暢 ― 2021-06-28
2021-06-28 當山日出夫(とうやまひでお)

野呂邦暢.『愛についてのデッサン-野呂邦暢作品集-』(ちくま文庫).筑摩書房.2021
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480437495/
岡崎武志の編になる、文庫オリジナル版である。
収録するのは、
愛についてのデッサン
世界の終わりロバート
恋人
隣人
鳩の首
このうち「愛についてのデッサン」は、連作短篇である。古書店をいとなむ佐古啓介を主人公とした、ミステリ仕立ての連作短篇となっている。もとは、「野性時代」に、一九七八年に掲載。それが、二〇〇六年にみすず書房から刊行されている。これを基本に、いくつかの短篇を加えて編集したものである。
野呂邦暢を読むのは始めてではないと思う。どの作品と明確な記憶はないのだが、比較的最近になって何かのアンソロジーで読んだような気がする。だから、名前は知っていた。
だが、野呂邦暢の作品ということで、意識的に作品集を読むのは、この文庫本が最初ということになる。
読んだ印象としては、確かに面白い。「愛についてのデッサン」は古書店ミステリとして読むと、その業界の内輪話などをちりばめながら、よくまとまって書けている。だが、「野生時代」と雑誌に発表された作品のせいか、今一つ、深みに欠けるという気がする。
が、それも、他に収録されているいくつかの作品を読むと、印象が変わる。ちょっと不可思議な、人生の不条理の一面をのぞき見るような雰囲気の作品になる。これは、面白い、いい作品だと思って読んだ。
たぶん、このちくま文庫版の出版をきっかけにして、野呂邦暢の再評価ということにつながるのかなと思う。新しい作品集が出るのを期待して待っていることにしようと思う。
2021年6月27日記
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480437495/
岡崎武志の編になる、文庫オリジナル版である。
収録するのは、
愛についてのデッサン
世界の終わりロバート
恋人
隣人
鳩の首
このうち「愛についてのデッサン」は、連作短篇である。古書店をいとなむ佐古啓介を主人公とした、ミステリ仕立ての連作短篇となっている。もとは、「野性時代」に、一九七八年に掲載。それが、二〇〇六年にみすず書房から刊行されている。これを基本に、いくつかの短篇を加えて編集したものである。
野呂邦暢を読むのは始めてではないと思う。どの作品と明確な記憶はないのだが、比較的最近になって何かのアンソロジーで読んだような気がする。だから、名前は知っていた。
だが、野呂邦暢の作品ということで、意識的に作品集を読むのは、この文庫本が最初ということになる。
読んだ印象としては、確かに面白い。「愛についてのデッサン」は古書店ミステリとして読むと、その業界の内輪話などをちりばめながら、よくまとまって書けている。だが、「野生時代」と雑誌に発表された作品のせいか、今一つ、深みに欠けるという気がする。
が、それも、他に収録されているいくつかの作品を読むと、印象が変わる。ちょっと不可思議な、人生の不条理の一面をのぞき見るような雰囲気の作品になる。これは、面白い、いい作品だと思って読んだ。
たぶん、このちくま文庫版の出版をきっかけにして、野呂邦暢の再評価ということにつながるのかなと思う。新しい作品集が出るのを期待して待っていることにしようと思う。
2021年6月27日記
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