『青天を衝け』あれこれ「篤太夫、帰国する」2021-08-24

2021-08-24 當山日出夫(とうやまひでお)

『青天を衝け』第25回「篤太夫、帰国する」
https://www.nhk.or.jp/seiten/story/25/

前回は、
やまもも書斎記 2021年8月17日
『青天を衝け』あれこれ「パリの御一新」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/08/17/9411326

今の我々は明治維新の結果を知っている。薩長新政府が樹立され、幕府は敗れ去ることになる。が、このことも、歴史の渦中にあっては、いったいこれからどうなるのか分からない時代でもあったのだろう。

その明治維新の渦中を描いていたのが、この回であったといっていい。特に、平九郎。幕府軍の側として戦い、壮絶な最期をとげることになる。

これまで、明治維新は、大河ドラマなどで幾たびも描かれてきたところであるが、特に幕府の側……強いていえば、敗れ去った側……の視点から、時代の激動を描いたものは、あまりなかったかと思う。ステレオタイプなものの見方かもしれないが、旧弊な幕府に対して、文明開化をかかげる新政府軍という図式である。どうしても、幕府の方が悪者になってしまいかねない。

敗れ去った側から明治維新を描いたといえば、以前のドラマでは『八重の桜』が思い浮かぶ。今回の『青天を衝け』では、江戸幕府のなかに視点を設定して、明治維新を描いている。

ところで、日本に帰ってきた栄一は、これからどうすることになるのだろうか。史実のうえでは、一時期、新政府に仕えるということなのだが、その後、民間の経済人として生きていくことになる。栄一の目には、新しい時代の、新しい経済の姿が、見え始めているのかもしれない。武士の時代ではない、近代の市民社会と経済という立場で歴史に臨むことになるのかと思う。

ドラマの放送の方は、またまたしばらくお休みである。これは残念だがいたしかたない。その間、『論語と算盤』を、積んである本のなかから取り出してきて読んでおこうかという気になっている。放送再開を楽しみにまつことにしよう。

2021年8月23日記

追記 2021年9月14日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年9月14日
『青天を衝け』あれこれ「篤太夫、再会する」
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/09/14/9423160