『スリープウォーカー』ジョセフ・ノックス/池田真紀子(訳)2021-09-11

2021-09-11 當山日出夫(とうやまひでお)

スリープウォーカー

ジョセフ・ノックス.池田真紀子(訳).『スリープウォーカー』(新潮文庫).新潮社.2011
https://www.shinchosha.co.jp/book/240153/

シリーズになっている三冊目なのだが、実は、この作者の作品を読むのは始めてである。読んだ印象を一言でいえば、今年のミステリベストには必ずはいるだろう、といったところである。

幾重もの謎がちりばめられている。

余命わずかな受刑者が、病院で殺された。この犯人は誰なのか。また、そもそも、その事件の本当の犯人なのか。ここにかかわることになるのが、エイダン・ウェイツ。警察官である。

だが、単純な探偵小説というのではない。文庫本のこの本の紹介にはノワールとある。人の世の暗黒面を描いた小説とでもいえばいいのだろうか。そして、警察小説、それも、いわゆる悪徳警察官小説として書かれている。

そこに、本格ミステリの謎解きが非常にたくみにからんできている。謎解きの部分と、悪徳警察官小説とが、見事に合体しているといっていいのだろう。

さらに、主人公のエイダンの身の上をめぐって、謎が重ねてある。読みごたえ十分である。

さて、この作品を読んで、さかのぼって過去のシリーズ作を読んでみたくなってはいるのだが、どうしようかというところである。他に読まねばならない本、読みたい本が、たくさんたまっている。

2021年9月10日記