『アンジェリーナ』小川洋子2021-09-25

2021-09-25 當山日出夫(とうやまひでお)

アンジェリーナ

小川洋子.『アンジェリーナ-佐野元春と10の短篇-』(角川文庫).KADOKAWA.1997(KADOKAWA.1993)
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999341001/

続きである。
やまもも書斎記 2021年9月18日
『ホテル・アイリス』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/09/18/9424603

収録するのは、次の作品。

アンジェリーナ-君が忘れた靴-
バルセロナの夜-光が輝く物語-
彼女はデリケート-ベジタリアンの口紅-
誰かが君のドアを叩いている-首にかけた指輪-
奇妙な日々-一番思い出したいこと-
ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-水のないプール
また明日…-金のピアス-
クリスマスタイム・イン・ブルー-聖なる夜に口笛吹いて-
ガラスのジェネレーション-プリティ・フラミンゴ-
情けない終末-コンサートが終わって-

どれも、佐野元春の歌に題材をとって、あるいは、それをイメージして、あるいは、それに触発されて……歌と小説がワンセットになっている短篇集である。

残念ながら、佐野元春の歌は、普段私が聴く音楽の中にはいっていないので、知らない曲ばかりである。CDも持っていない。

ここは、純然と小川洋子の小説として読むことになる。そして、そこに展開されるのは、人生のふとした瞬間をきりとったときに感じるような、奇妙な感覚とでもいっていいだろうか。どこかしら不思議な感じのする作品が多い。不思議といっても怪異ではない。不条理でもない。ごく普通の日常の生活のなかにある、かすかなきしみとでいおうか、ある場面をあざやかに切り取って、物語にしたててある。

このような短篇集を読むと、小川洋子というのは、天性の小説家、物語作家なのだなと感じるところがある。小説家の文学的空想力で、人間というものを的確にとらえている。

2021年6月4日記

追記 2021年10月2日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年10月2日
『原稿零枚日記』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/02/9428700