『斎藤茂吉歌集』岩波文庫2021-11-06

2021-11-06 當山日出夫(とうやまひでお)

斎藤茂吉歌集

斎藤茂吉.山口茂吉・柴生田稔・佐藤佐太郎(編).『斎藤茂吉歌集』(岩波文庫).岩波書店.1958(1978.改版)
https://www.iwanami.co.jp/book/b270753.html

北杜夫の茂吉四部作を読んだら、斎藤茂吉の短歌を読んでおきたくなった。

やまもも書斎記 2021年10月18日
『青年茂吉』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/18/9432975

やまもも書斎記 2021年10月23日
『壮年茂吉』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/23/9434273

やまもも書斎記 2021年10月28日
『茂吉彷徨』北杜夫
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/28/9435565

やまもも書斎記 2021年11月1日
『茂吉晩年』北杜夫
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/11/01/9436671

歌集というものを読む、それも近代短歌については、ひさしぶりである。以前に、『赤光』は新潮文庫版で読んでいる。

やまもも書斎記 2017年12月8日
『赤光』斎藤茂吉
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/12/08/8744535

北杜夫の評伝で、随所に歌の引用があるので、茂吉はこのような歌を詠んできたのか、ということの概略はわかる。だが、『赤光』から順番に、晩年の歌まで……ただ、文庫本なので選集という性質はあるのだが……読んでみると、北杜夫の本で知ったことの後をなぞるように、各歌に接することになる。

読み終えて残るは、やはり静かな文学的感銘といっていいだろう。初期の『赤光』から晩年の『つきかげ』まで読み進めていくと、その歌とともに、茂吉の歌人としての、あるいは、精神科医としての人生をなぞることになる。そして、若かった茂吉も、最後には年老いていく。その老いのありさまを、茂吉は非常にすなおに歌にしていると感じる。

日本の近代文学において、人間の老いというものを描いた文学がどれほどあるか、不案内なのだが、少なくとも、茂吉の短歌は確かに人間の老いというものを、確実に描いている。あるいは、歌集を読んでこのように感じるというのも、私自身が年老いてきたということもあるのかとも思うのだが。

ちょっと興味があって、斎藤茂吉全集を検索してみたのだが、今では非常に安価に買える。といって、今から茂吉の全集を手にして、その歌を読んでみようとまでは思わない。せいぜい、昔買った中央公論社の「日本の詩歌」の茂吉の巻でも、読んでみようかと思う。

2021年10月20日記