『真説 日本左翼史 戦後左翼の源流 1945-1960』池上彰・佐藤優2022-02-11

2022年2月11日 當山日出夫(とうやまひでお)

真説 日本左翼史

池上彰・佐藤優.『真説 日本左翼史 戦後左翼の源流 1945-1960』(講談社現代新書).講談社.2021
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348699

売れている本らしい。読んでおくことにした。が、読んでみて思うことは、とても面白い本であり、ためになる本であるということである。

タイトルの通り、日本の「左翼」運動の歴史を対談形式でたどっている。この巻では、戦前からスタートして、おおむね60年安保のあたりまで。時として、冷戦終結、ソ連崩壊のあたりのことまで話しが及んでいる。

「左翼史」とあるが、具体的には、共産党の歴史であり、社会党の歴史が主なところである。なるほど、共産党という政党は、このような歴史があったのか、社会党の凋落はこのあたりに起因するのか、と今になっていろいろと思うことが多い。

私は、一九五五(昭和三〇)年の生まれなのであるが、物心ついたときには、政治の世界は、いわゆる五五年体制でかたまっていた時代である。保革伯仲であり、あるいは、社会党からすれば、三分の一を確保するだけの万年野党であり、自民党としては過半数を確保している安定与党ということになる。緊張感もあったが、しかし、同時にどこかしら生ぬるい感じを覚えている。

この本は「左翼」の歴史をたどっている。左翼というのは革新の立場である。「保守」思想ではない。単純化してみるならば、「左翼」は理性と理論を重視し、「保守」は伝統と感情を重視する。

私はといえば、どちらかといえば、保守的な人間なのであろうとは思う。だが、決して体制的ではないつもりでいる。

歴史、政治の流れをたどるとき、政権の中枢で何がどう決断され実行されてきたかという歴史もあるが、一方で、反体制の側から見る歴史もある。この意味では、戦前から戦後にかけての、反体制の歴史のある面を描き出している。ただ、この巻を読んだところで、やや不満に思うところは、実は左翼は、右翼とも、裏でつながっている……このあたりの感覚は、時代のなかで感じてきたところであるが……ここのところに踏み込んでいないことである。

この巻を読んで思うことは、左翼がだめになったということは、右翼もだらしないし、また政権の側もがたがきているということなのだろう。つづいて、続巻を読むことにしたい。

2022年2月1日記

追記 2022年2月12日
この続きは、
やまもも書斎記 2022年2月12日
『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』池上彰・佐藤優
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/02/12/9463303