『みずうみ』川端康成/新潮文庫2022-03-04

2022年3月4日 當山日出夫(とうやまひでお)

みずうみ

川端康成.『みずうみ』(新潮文庫).新潮社.1960(2012.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100118/

新潮文庫版の解説を書いているのは、中村真一郎。その解説のなかで、プルーストに言及して、この小説は、意識の流れを描いたものであると論じている。この発想は、やはり中村真一郎ならではのものであろうが、私はこれに深く同意する。

この小説、筋立てを追って読んで行くと、はっきり言って支離滅裂である。だが、はじめから読んでいって、この小説を語っている意識の流れの連続性というものは、確かにある。そう長くはない作品である。ほぼ一息に読める。読んでいる間、登場人物の心のうちに入りこんでいく。それが、連続的に移り変わる登場人物にしたがって、そのままに意識も流れていく。これは、連続したものとして読むことができる。

文庫本の解説によると、この小説が発表された当時、賛否両論いろいろとあったらしい。常識的に判断して、『伊豆の踊子』とか『雪国』のような小説と比較してみるならば、ある意味で破綻した作品である。だが、これは、常識的なリアリズムの感覚では読めないということである。そうではなく、登場人物の意識に身を任せて読み進めていくならば、そこには、川端康成ならではの文学世界が存在することになる。

川端康成の小説としては異色の作品なのかもしれない。しかし、この『みずうみ』に見られるような意識の流れの連続性という観点で見るならば、『雪国』もまた同類と言っていいのかとも思う。

川端康成を理解するためには、重要な作品であると感じる。そして、川端康成の文学から、まだまだ学ぶべきものが多くあると感じたりもする。

2022年2月8日記