『愛する人達』川端康成/新潮文庫2022-03-12

2022年3月12日 當山日出夫(とうやまひでお)

愛する人達

川端康成.『愛する人達』(新潮文庫).新潮社.1951(2004.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100104/

川端康成の作品を、新潮文庫で読んでいっている。これは、短篇集である。一九五一(昭和二六)年に文庫本で出ているから、かなり以前の作品集ということになる。解説を書いているのは高見順である。

収録するのは、次の作品。

母の初恋
女の夢
黒子の手紙
夜のさいころ
燕の童女
夫唱婦和
子供一人
ゆくひと
年の暮

読んで感じるところは、川場康成はたくみな短編作家であるということである。どの作品もいい。戦後の川場康成の作品として、女の哀愁とでもいうようなものを感じさせる。

なかで気に入ったのは、「夜のさいころ」。旅芸人の物語である。読むと、「伊豆の踊子」とか「温泉宿」とかを書いた作家の目を感じるところがある。さいころの音が、たくみに描写されている。

この本を読むと、川場康成は、やはり巧みな短編小説作家なのであるということについて、認識を新たにする。

2022年3月6日記