『舞姫』川端康成/新潮文庫2022-03-14

2022年3月14日 當山日出夫(とうやまひでお)

舞姫

川端康成.『舞姫』(新潮文庫).新潮社.1954(2011.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100107/

川端康成を読んでいっている。『舞姫』を読むのは、初めてになるかと思う。若い時に手にしたかもしれないのだが、すっかり忘れてしまっている。

読んでみての印象は、はっきり言ってよくわからないというのが正直なところ。特に文章が難解であるわけでもないし、筋立てが分かりにくいということでもない。全体のストーリーは、比較的シンプルなのであるが、今一つ、この作品の世界に入っていけないと感じてしまった。

その一つの理由としては、やはり川端康成が描く家庭というものにあるのかもしれない。円満な、どこにでもあるような普通の家庭というものではない。

だが、これも、二一世紀の今日になって見るならば、ごく普通の家庭というのが、おおきく価値観が変わってきていることはある。漫画のような……たとえば、「サザエさん」のような家庭というものは、今では、ドラマや小説においては、過去のものであると言っていいのだろう。(だからこそ今でも「サザエさん」は人気が続いているともいえるのだろうが。)

そう思ってみるならば、川端康成の描いた夫婦とか家庭というものは、今の世の中にあっても古びることはないのかとも思えてくる。この意味において、川端康成は、現代においても新鮮に読みうる小説ということになろうか。

ところで、この小説の舞台になっているのは、戦後まもなくの日本である。まだ、進駐軍がいた時代のことになる。これはこれで非常に面白い。今では過去のことになってしまったこと……戦後の占領下の日本で、人びとがどのように暮らしていたのか、今では分からなくなってしまっていることが多くある。この小説を読んでいて、なるほど過去のある時代の日本とはこんなものであったのかと、認識を新たにするところが、いくつかあった。

川端康成が描いた夫婦とか家庭などは、独特の美意識に沿っている。それが、今の時代にまで読み継がれている所以なのかと思った次第である。

2022年3月13日記