『人間とマンボウ』北杜夫/中公文庫2022-05-14

2022年5月14日 當山日出夫(とうやまひでお)

人間とマンボウ

北杜夫.『人間とマンボウ』(中公文庫).中央公論新社.2022(中央公論社.1972 中公文庫.1975)
https://www.chuko.co.jp/bunko/2022/04/207197.html

これは、以前に中央公論社で刊行になり、中公文庫でも刊行されていたものの、文庫本の新版である。北杜夫の「どくとるマンボウ」のシリーズのいくつかは学生のときに手にしたのだが、この本は読まずに過ぎてしまっていた。

タイトルどおり、様々な人物についてのエッセイ集ということになる。読んで非常に面白い本である。印象に残ることを、二つばかり書いておきたい。

第一に、三島由紀夫。

三島由紀夫との交流について書いてある。三島由紀夫が、『楡家の人びと』を激賞した話しは有名だと思う。この本で出てくるのが、『白きたおやかな峰』についての文章。書簡の引用という形で掲載してある。これを読むと、三島由紀夫は、文学の鑑賞眼においても、一流の見識を有していたことが理解される。

ここに掲載の三島由紀夫関係の文章は、すぐれた三島論の一つであり、また、三島由紀夫の残したすぐれた文学論の一つといっていいだろう。

第二に、斎藤茂吉。

父親の斎藤茂吉についての、いくつかの文章を収録してある。斎藤茂吉については、北杜夫の書いた評伝四部作は読んだ。それといくぶん重複するところはあるかと感じるが、しかし、ここに収められた文章は、子供の北杜夫でしか書けない斎藤茂吉である。斎藤茂吉についての文章として読んで、非常に面白い。

以上の二点が印象に残るところである。

この他、近現代の作家についての文章が収められている。遠藤周作や辻邦生、手塚治虫などについて書かれたものもある。どれも面白い。

どくとるマンボウの主なものは読んできたつもりであるが、読みそびれているものがいくつかある。今でも読める本がある。今は三島由紀夫を軸に呼んでいるのだが、折をみて北杜夫の本も読んでおきたい。

2022年5月13日記

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