『夕暮れに夜明けの歌を』奈倉有里 ― 2022-06-25
2022年6月25日 當山日出夫

奈倉有里.『夕暮れに夜明けの歌を-文学を探しにロシアに行く-』.イーストプレス.2021
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620121
話題の本ということで読んでおくことにした。いい本である。およそ文学について考えることのある人は手に取る価値ある。
この本が刊行になったのは、二〇二一年。まだ、ロシアのウクライナ侵略の前のことである。だが、この本において、二〇一四年のクリミア併合のことに言及して、ロシアとウクライナの問題を、深く考えてある。といっても、国際政治の分析ではない。国家と言語、そして、文学、文化というものと、大きな歴史の流れを見つめている。その視線は、おだやかではあるが、しかし、するどい。
また、この本はこれまでの著者の経歴をなぞって記述してある。子供のときの思い出からはじまって、ロシアへの留学。そこでの勉学。なかんずく、ロシア文学を読み、学ぶということのもつ意味について、深く静かに考察をめぐらしてある。
その傍ら、ロシアでの学生生活の様子の記述が興味深い。なるほどロシアの学生、ペテルブルグやモスクワの学生やそこに住んでいる人びとは、こんなふうな生活を送っているのか、その一端をかいまみることができる。(その記録としても、この本は貴重であると思う。)
この本は、ロシアのウクライナ侵略ということで注目されていると思う。だが、このような歴史的政治的事情を抜きにして、ただ、文学について語るとはどういうことなのか、思いをめぐらせるときに傍らにあっていい本である。文学というものの普遍性に眼差しが向いている。
2022年6月15日記
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620121
話題の本ということで読んでおくことにした。いい本である。およそ文学について考えることのある人は手に取る価値ある。
この本が刊行になったのは、二〇二一年。まだ、ロシアのウクライナ侵略の前のことである。だが、この本において、二〇一四年のクリミア併合のことに言及して、ロシアとウクライナの問題を、深く考えてある。といっても、国際政治の分析ではない。国家と言語、そして、文学、文化というものと、大きな歴史の流れを見つめている。その視線は、おだやかではあるが、しかし、するどい。
また、この本はこれまでの著者の経歴をなぞって記述してある。子供のときの思い出からはじまって、ロシアへの留学。そこでの勉学。なかんずく、ロシア文学を読み、学ぶということのもつ意味について、深く静かに考察をめぐらしてある。
その傍ら、ロシアでの学生生活の様子の記述が興味深い。なるほどロシアの学生、ペテルブルグやモスクワの学生やそこに住んでいる人びとは、こんなふうな生活を送っているのか、その一端をかいまみることができる。(その記録としても、この本は貴重であると思う。)
この本は、ロシアのウクライナ侵略ということで注目されていると思う。だが、このような歴史的政治的事情を抜きにして、ただ、文学について語るとはどういうことなのか、思いをめぐらせるときに傍らにあっていい本である。文学というものの普遍性に眼差しが向いている。
2022年6月15日記
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