「イワン・イリイチの死」トルストイ/望月哲男(訳)2022-08-04

2022年8月4日 當山日出夫

イワン・イリイチの死

トルストイ.望月哲男(訳).『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』(光文社古典新訳文庫).光文社.2006
https://www.kotensinyaku.jp/books/book09/

歳をとってきたこともあるか、自分の死ぬときのことを思うことが多くなった。はたして、自分はどんなふうに死ぬことになるのだろうか、まったく他人事ではないと、常々感じるところがある。

「イワン・イリイチの死」は、名前は知っていたが、読むのは初めてになる。読んでなるほど、トルストイとは、人の死というものを、このように文学に書いているのかと、強く感銘をうける。

文学とは芸術なのである。この当たり前のことが、今では忘れられているように思えてならない。(だから、芸術とは何かを考えることはないのであるが。まあ、このあたりは、常識的に考えておくことにしたい。)

トルストイを読むと、芸術としての文学ということを強く感じる。それは、人間とは何か、生きているとはどういうことなのか、人生とは何であるのか……というようなことについて、深く心のうちに問いかけるところがある、ということである。

そこに同意するかどうかということは別にしても、読んで、深くこころをうたれるということはある。「イワン・イリイチの死」は、人間の生きていること、あるいは、その果てにある死というものについて、こころのうちに問いかけるものがある。

2022年6月18日記