「風よあらしよ」(一)2022-09-08

2022年9月8日 當山日出夫

NHK 「風よあらしよ」

伊藤野枝の名前は知っていた。しばらく前に岩波文庫で出た『伊藤野枝集』は買った。ただ、買っただけでしまいこんであるのだが。

原作の小説は読んでいない。

大正時代の、伊藤野枝、平塚らいてう、辻潤、大杉栄……このあたりを中心に展開するドラマとして作ってあるようだ。第一回を見た限りでは、かなりちからをいれて作ったと感じる。

いいと感じるところは、ただ時代の先駆者としての伊藤野枝の姿だけを描いていないところにあると思う。伊藤野枝が家を出て、青鞜にかかわるきっかけになったのは、女学校の教師であった辻潤の影響なのだが、その辻潤は、エゴイストである。

今でいう、フェミニズムの観点から見たとき、それは、近代社会のなかにおける個人のエゴと両立できるものなのだろうか。ただ、進歩的な思想としての女性解放、フェミニズムの先駆者としての伊藤野枝の姿を、さらに相対化して見る視点を感じる。

時代は大正のはじめごろである。その時代における思想的先がけの姿を描くだけではなく、時代の流れのなかにある個人のエゴというものを、このドラマは描いていると感じるところがある。どのような先駆者であっても、時代の中に存在するものであると理解していいだろうか。

2022年9月6日記