「芥川賞を読む。〜“正しさの時代”の向こうへ〜」2022-09-30

2022年9月30日 當山日出夫

NHK Eテレ 芥川賞を読む。〜“正しさの時代”の向こうへ〜

芥川賞が、時として話題になることがある。今回の芥川賞も、ある意味では話題になったところがある。それは、候補作家全員が女性であるという、おそらく、文学にとってはどうでもいいことが、報道などで語られたことは記憶に新しい。

受賞作は買った。ただ、積んだままになっている。夏の間に読もうと思って、そのままになっている。

この番組であるが、芥川賞の候補作を、「正しさ」という観点から読み解いている。PC(政治的な正しさ)ということがよく言われる。この「正しさ」を持ち出されると、それに抵抗することは難しい。今の社会「正しさ」あるいは、「多様性」ということは、重要な意味を持つ。だが、それを持ち出されるときに、こぼれ落ちてしまう何かの心のわだかまりのようなものがある。それを、この番組は、芥川賞候補作を読むことによってすくい取っていくことになる。

放送自体は、よく出来ている番組で、いろいろと考えることがあった。その一方で、この番組を作るきっかけになったこととして、やはり、候補作家が全員女性であるということがあったせいなのかなと、ちょっと勘ぐりたくなってしまうところも残る。

ともあれ、「正しさ」というのは、どこかにゴールを求めることではないだろう。「正しさ」を固定してしまったとき、そこから抜け落ちたものが必ずある。必要なのは、「正しさ」を考える姿勢なのだろうとは思う。

その一方で、いわゆるマイノリティの人びとが優遇されるような印象が残ってしまうとするならば、それはそれで問題がある。たぶん、これは、世のヘイト感情の根底にある、不当に扱われていると感じるマジョリティの側の気持ちとしてあるにちがいない。

少なくとも今言えることとしては、「正しさ」を考えるときには、想像力が必要であるということだろう。それともう一つは、歴史的に正しい知識である。文学は、想像力を喚起してくれるものとして、これから重要なものになっていくにちがいない。(だからといって、文学をその社会的効用で議論するのは、好きではないのだが。)

2022年9月28日記

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