『わたしの渡世日記』(下)高峰秀子/文春文庫2022-11-26

2022年11月26日 當山日出夫

わたしの渡世日記(下)

高峰秀子.『わたしの渡世日記』(下)(文春文庫).文藝春秋.1998(朝日新聞社.1976)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167587031

続きである。

やまもも書斎記 2022年11月18日
『わたしの渡世日記』(上)高峰秀子/文春文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/11/18/9541799

上巻に続けて読んだ。上下巻、ほぼ連続的に読んだことになる。ちょっと時間をおいて、下巻を読もうかと思っていたが、面白いので続けて読むことにした。

読んで思うところはいろいろある。

上下巻を読んで感じるの、何よりも著者の人を見る目の確かさであり、同時に、それを文章にするときの冷酷さとでもいうべきものであり、そして、にもかかわらずそのような内容を書いて読ませる文章になっている文章の力であり、全体にただようユーモア……このようなことを思ってみる。

ところどころで言及される人物評が面白い。映画人、監督、俳優のみならず著名な人物が幾人か登場する。なかで面白いのが、新村出、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、などである。こんな人物だったのかと、その書いたものからは簡単に知ることのできない、意外な面を描いている。とても面白い。

下巻は、戦後のことからはじまる。そのなかで特筆すべきは、パリ行きのことである。仕事につかれた高峰秀子は、単身、フランスに行きパリで一人暮らしをする。戦後間もないころであり、そんなに日本からの外国行きが自由ではなかった時代のことである。この時のパリでの生活の様子、それから、そこで感じたことなど、この本の著者ならではものだと感じさせる。特に人形を買うエピソードなどは、そんなものなのかと思ってしまう。

『わたしの渡世日記』は、すぐれた映画論、俳優論、監督論にもなっている。これは、幼い時から映画制作の現場で成長することになった著者ならではの視点を、随所に感じることができる。これを読んで、小津安二郎や成瀬巳喜男の作品など、見なおしてみたくなった。

高峰秀子のエッセイは、他にも今でも文庫本で手に入るものがいくつかある。読んでおきたいと思う。

2022年11月13日記

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