『22世紀の民主主義』成田悠輔2022-12-08

2022年12月8日 當山日出夫

22世紀の民主主義

成田悠輔.『22世紀の民主主義』(SB新書).SBクリエイティブ.2022
https://www.sbcr.jp/product/4815615604/

売れている本ということで読んでみることにした。読んで思うこととしては、次の二点になる。

第一には共感できるところ。

現在の民主主義、この本では選挙制度といっていいと思うのだが、これについて、二一世紀になった今、制度的に様々な問題があることは理解できる。なぜ、選挙区にわけて、数年に一度選挙するのか。その選挙の結果、国や社会はよりよい方向にむかっていくのだろうか。ここについては、疑問のあるところである。

この本で指摘されているように、近年、民主主義のシステムを採用している、いわゆる西欧先進諸国……日本を含めてということになるが……の衰退傾向が目立つ。それに対して、独裁的な政治体制の国の方が、経済成長の面だけとりだしてみれば、うまくいっているように見える。

だから独裁体制の方がいいということはない。しかし、代議制民主主義、選挙というシステムが、二一世紀の今日において、制度的に問題のあることは、あきらかではないだろうか。このあたりの問題意識については、かなり共感できるところがある。

第二に共感できないところ。

人間が無意識に感じているところ、それを種々の方法によって、政治に反映することのこころみが語られる。このあたりの主張については、どう楽観的にすぎるように思われる。

私がそう思っているだけなのかもしれないが、人間とは邪悪なものである。それをどうごまかして、よりよい社会にしていくのか、そう簡単ではないと思う。アルゴリズムの進展で、それは克服できると著者は主張するようなのだが、これには納得しかねるところがある。

また、言語とか、宗教とか、文化とか、民族とか、このような問題については、これからどうあるべきなのだろうか。これもアルゴリズムで解決できるということなのだろうか。さらには、統治の正統性とか、法の正義とかは、どうなるのだろうか。そもそも、そのような状態において、国家とは何であるのか。

どうもこの本の言っていることは、アルゴリズムということを、極めて肯定的に、あるいは、楽観的に捕らえているとしか思えない。このあたり、この本に今一つ共感できないところでもある。

以上の二点が、この本を読んで思ったことなどである。

書いてあることに全面的に賛同するということはない。しかし、現在の、選挙制度、民主主義のあり方について、考えることは重要である。一読には値する本だと思う。

2022年10月18日記

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