『剣客商売』池波正太郎2023-01-28

2023年1月28日 當山日出夫

剣客商売

池波正太郎.『剣客商売 剣客商売 一 新装版』(新潮文庫).新潮社.2002(新潮社.1973)
https://www.shinchosha.co.jp/book/115731/

池波正太郎を読んでみようと思って読んでいる。「剣客商売」のシリーズの第一冊目である。大人気の時代小説シリーズということなのだが、あいにくと私はこれまでにこのシリーズを読んだことがない。何度かテレビドラマにもなっていることは知っていたのだが、これも、何故かまったく見ずに来てしまっている。

このシリーズは、「藤枝梅安」のシリーズと、ほぼ同時期にスタートしていることになる。私が高校生のころである。(私が高校生のころに、人気だった時代小説というと「木枯し紋次郎」がある。このテレビドラマは見たのだが、小説を読んだのは、大学生になってから、文庫本で出たのを手にした。)

読んで思うこととしては、次の二点ぐらいを書いておきたい。

第一に、「剣客」という設定。

時代小説、剣豪小説と言っていいジャンルになる。そこで、江戸時代に「剣客」ということで生きている秋山小兵衛が主人公なのだが、魅力的である。が、ちょっと気になることとしては、「剣客」というのはどうやって身過ぎ世過ぎを立てていたのだろうか。下世話な興味かもしれないが、このあたりがどうにも気になってしかたがない。読むと、何かのつてがあって、それなりに収入があるようである。このような設定で小説を書くということが、まさに時代小説というジャンルに許されたところなのかなと思う。

第二に、女性剣士。

池波正太郎を読んでみようとおもったのは、正月のNHKのドラマ「まんぞくまんぞく」を見たのがきっかけである。これは、女性剣士の真琴を主人公としている。主演は、石橋静河。このドラマの女性剣士のイメージが、この小説に出てくる三冬に重なる。藤枝梅安のような人物を描いていた作者が、同時に三冬のような登場人物を書いていたかと思うと、これは興味深いものがある。

また、(実際の歴史的な事実関係は別として)時代小説として、女性の剣の使い手というのは、やや珍しいのかもしれない。(ただ、これは私が知らないだけで、時代小説ではよくある設定なのかなとも思うが。)

以上の二点ぐらいを書いてみる。

それにしても、六〇近くになって、二〇歳ほどの娘と仲良く暮らしている、秋山小兵衛という人物も面白い。それに、その息子の大治郎、さらに三冬をメインの登場人物とし、それに田沼意次までも登場する、このシリーズは人気があるのもうなづける。といって、さらに続けて残りのシリーズを読んでみようという気にはならないのであるが。

2023年1月6日記