『江戸川乱歩傑作選』江戸川乱歩/新潮文庫2023-03-03

2023年3月3日 當山日出夫

江戸川乱歩傑作選

江戸川乱歩.『江戸川乱歩傑作選』(新潮文庫).新潮社.1960(2009.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/114901/

NHKで放送した『探偵ロマンス』を見たら、江戸川乱歩が読みたくなった。私が若いころに江戸川乱歩を読んだのは、中学か高校のときだったかと記憶する。文庫本で読んだかと思うのだが、どの文庫だったかは定かではない。

収録するのは、

二銭銅貨
二廃人
D坂の殺人事件
心理試験
赤い部屋
屋根裏の散歩者
人間椅子
鏡地獄
芋虫

江戸川乱歩としては、主に大正時代に発表した初期の短篇の傑作ということになる。(どの作品もこれまでに何かで読んだことがあると記憶している。)

大正時代にこれらの作品が書かれたということを思うと、ふと連想が、芥川龍之介、佐藤春夫、谷崎潤一郎、そして、北原白秋、萩原朔太郎……などにおよぶ。これらの作家の作品が書かれたと同時代に、江戸川乱歩も書いていたことになる。そして、大正という時代の空気のようなものを感じるところがある。

無論、日本の「探偵小説」の歴史にとって、記念すべき作品であることは確かなのだが、探偵小説という枠にとらわれないで、一つの時代の芸術のあり方というようなものを感じとることになる。

どうでもいいことだが、『探偵ロマンス』で何故三重県の女性が出てきたのか、よく分からずにいたのだが、江戸川乱歩は三重県の出身で東京に出て作家になったという経歴を確認して、納得がいったところでもある。

どの作品もいいが、印象に残るのは、「二銭銅貨」「人間椅子」「芋虫」などであろうか。テーマといい、語り口の巧さといい、いささかも古びたところがない。現代の目で読んでも新鮮である。やはり、江戸川乱歩は、これからも読まれ続けていく作家であると思う。

2023年2月18日記

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