映像の世紀バタフライエフェクト「満州帝国 実験国家の夢と幻」2023-04-13

2023年4月13日 當山日出夫

映像の世紀バタフライエフェクト 満州帝国 実験国家の夢と幻

満州については、これまで「映像の世紀」シリーズで幾度か扱われてきていると思うが、これは見応えがあった。(やはり年度が替わって番組をリニューアルしたと感じるところがある。「映像の世紀」の原点に返ったと思う。)

満州、満洲国については、小説などで取り上げられることもある。近いところでは、この前の直木賞『地図と拳』がある。また、浅田次郎があつかってもいる。だが、満州ということになると、小説よりも、「映像の世紀」の方が面白い。面白いというのはちょっと違うかなとも思う。事実は小説よりも奇なりというが、小説に描かれる幾多の物語よりも、映像資料の方が圧倒的に迫力があるのである。

満州国皇帝溥儀の映像のいくつかは、何よりも満洲国の本質を示すように思える。

ただ、溥儀はその晩年は中国にあった。思想教育をうけて改心したということにはなっているのだが、はたして本当のところはどうだったのだろうか。このようなこともふと思ってみたくなる。

満州国は実験国家だった。それを象徴するのが、今も残る街路であり、また、あじあ号であったということになるのだろう。満州は未完であるというのが、正直な感想である。実験国家がその後つくりだしたものが、日本の高度経済成長であり、新幹線なのかもしれない。あるいは、今の、中国という国家資本主義の国のあり方も、ある意味では満州の影響下にあると言ってもいいのではないだろうか。(今の中国のことと、満洲国とを関連付ける議論はあまり無いようにも思うが、これは、私の読むものの範囲に入ってこないだけのことだろうか。)

鮎川義介が登場していた。「映像の世紀」シリーズはほとんど見ているはずだが、出てくるのは初めてかもしれない。日産もまた、満州国の残滓であるといえようか。

ところで、出てこなかったのが建国大学。これもまた実験国家ならではのものだと思う。映像資料が残っていないのだろうか。

2023年4月11日記