映像の世紀バタフライエフェクト「ベルリン 戦後ゼロ年」2023-04-20

2023年4月20日 當山日出夫

映像の世紀バタフライエフェクト「ベルリン 戦後ゼロ年」

これは面白かった。これまで、第二次世界大戦のころの映像資料というと、番組の編成で使い回していることが多かったが、この回は、ほとんどが新資料によるものだと思われる。これまでの「映像の世紀」シリーズはほとんど見ているのだが、これは新たな視点から、新たな資料を見せていたと思う。(このシリーズ、四月になってからのものは、リニューアルしたのだろう、すぐれた力作ぞろいである。)

敗戦後まもなくのドイツでいったい何があったのか。ソ連軍をはじめとする占領軍は何をしたのか。混乱の中での略奪や強姦。これは、今まであまり描かれてこなかったことである。

また、敗戦後、ヨーロッパの各地でドイツ人はどのような状況にあったのか。敗戦国民としてどうあつかわれたのか。そこであった大量虐殺は、この放送で始めて知ったことになる。

なるほど、戦争に負けるとはこのようなことなのか、とつくづく感じながら見ていた。

第二次世界大戦のとき、ヨーロッパの戦場でいったい何があったのか。独ソ戦をふくめて、これからさらに資料を発掘していくことになるのかと思う。ただ、ヒトラーを悪とし、連合国側(ソ連をふくめて)を、正義とする歴史観では、これからの、新たな時代の歴史を語ることはできないだろう。

歴史とは、人びとの記憶であり物語である。このような側面がある。この意味で、第二次世界大戦の歴史と記憶、それをどのような物語として語っていくか、あらたな段階になっていると思う。二一世紀は、これまでの二〇世紀の物語は通用しない、新しい時代になってきていることを強く感じる。

これは、日本についてもいえることだろう。日本の場合、敗戦後、アメリカに占領されたのだが、ドイツのような悲惨な状況ではなかったように思える。これは、はたして実際はどうだったろうか。新たな視点からの考察が求められる時代になってきているといっていいだろう。

戦後のドイツを描いてはいたが、その底流には、現代の日本の姿、それがよってたつ歴史がなんであるかについての批判的な視点があったと思う。

2023年4月18日記