『らんまん』あれこれ「キツネノカミソリ」2023-05-07

2023年5月7日 當山日出夫

『らんまん』第5週「キツネノカミソリ」

万太郎は、土佐を出て植物学にはげむ決意をかためる。そのきっかけになったのが、自由民権運動である。

この時代の自由民権運動については、いろいろ考えるべきところがあるだろうが、ただ、女性の権利ということが、すでにこの時代に言われていたかどうか、このあたりはちょっと気になるところである。「青鞜」の時代をまたなくても、すでにこの時代から基本的人権として言われていたということでも、これはこれでいいのだろう。少なくとも、ドラマの展開のうえでは、姉の綾の生き方とも関係してくる。

万太郎は、自分の置かれている境遇を理解する。峰屋という裕福な家に生まれたので、自由に勉強ができた。本を買うこともできた。そして、また、自分自身の才能に気づいている。植物を見る目がある。絵を描くことができる。何より重要なことは、それが好きということである。好きであるというのは、重要な才能である。

一方、綾の方は、峰屋とともに生きる決意をかためる。

また、竹雄は、峰屋の奉公人であり、これからも万太郎とともに生きていこうとする。

万太郎は自分の才能のために生きようとする。これはこれでいいのだが、しかし、これは同時に、近代社会になってもなお残る封建的な制度をひきずってのことになる。峰屋という後ろ盾があり、それは姉の綾がうけつぐことになる。東京に出る万太郎には、竹雄という奉公人がついてくる。このあたり、明治の文明開化の新しい時代と、まだ残る封建的な遺制との矛盾ということにはなるのだが、ドラマの展開の上では、そう無理があるとは感じない。

むしろ、封建的な制度が残るなかで、自らの新しい生き方を選んだ、万太郎と綾と竹雄のそれぞれの決断に共感するような作りになっている。これは、これでドラマとして、この時代の描き方になるのだろう。

さて、土佐が終わって、次週から東京編になる。東京で、万太郎はどのように生きていくことになるのか。楽しみに見ることにしよう。

2023年5月6日記