『らんまん』あれこれ「ドクダミ」2023-05-14

2023年5月14日 當山日出夫

『らんまん』第6週「ドクダミ」

この週は、万太郎が東京に出てきて、住むところを見つける話し。それから、寿恵子との再会であった。

東京に竹雄と一緒に出てきた万太郎は、まず住むところに困る。大量の標本などを受け入れてくれるところがない。やむなく、東京大学に近いところに住むところを探すことになる。このあたりの顚末は、ドラマとしては面白く作ってあった。

ただ、この時代、万太郎のような人間……土佐の裕福な蔵元の御曹司……が、東京に出てきて住まいするのに、うらぶれた長屋住まいというのは、どうなのだろうか。確かに話しとしては、これで面白いのだが、いわゆる身分、社会的階層という観点から見て、棒手振りで生計をたたているとか、荷車の後押しで稼ぐとか、どうみても社会の最底辺の人びとである。このような人びとが暮らしていたのは、東京における、貧民窟というあたりであって、それが、東京大学の学生……長屋には学生も住まいしていることになっている……と、同じというのは、どうかと思う。万太郎も、正規に東京大学で学ぶということはないのだが、少なくとも研究室に出入りを許される立場になる(はずである。)まあ、学生とほぼ同等と言っていいだろう。

少し後の時代のことになるが、漱石の『三四郞』の小川三四郞は九州から上京して、賄い付きの下宿である。あるいは『こころ』の先生は、若いとき、これもまかないつきの下宿住まいであった。決して、貧民窟というようなところではない。

明治のころの社会階層の描き方について、あまり細かに詮索しない方がいいのかもしれないが、ちょっとこのあたりの作り方は気にはなるところである。

それから、ドクダミは、陽の当たらないところに咲くと出てきたが、これもちょっと気になる。我が家にドクダミは咲くのだが、必ずしも日陰とは限っていない。日陰にも咲くが、陽のあたるところにもはびこる。このところは、ドクダミのしげるような、陰湿な場所にある長屋ということでいいのかもしれない。

さて、次週以降、いよいよ万太郎は東京大学へゆくことになるようだ。楽しみに見ることにしよう。

2023年5月13日記