『らんまん』あれこれ「ボタン」2023-05-21

2023年5月21日 當山日出夫

『らんまん』第7週「ボタン」

万太郎は、東京大学の植物学教室に出入りできるようになった。このあたりは、牧野富太郎の史実をかなり忠実に踏まえて作ってあるところだろう。

日本の植物学の黎明期である。植物学というよりも、日本の近代的な学問全体にとって、まだスタートしたばかりである。大学は出来たものの、その教員の多くは、お雇い外国人。日本人の手で、日本の国の学問を成りたたせるのは、これからという時期である。このような時期だからこそ、学歴については、小学校中退という万太郎が、東京大学に出入りが許されたというのも、あり得ることかとも思う。

時代としては、まさに鹿鳴館の時代ということになる。

出入りが許されたと言っても給料が貰えるわけではない。ただ、牧野富太郎は、その後紆余曲折があって、助手になり講師になりということではあるのだが、このドラマは、このあたりはどう描くことになるだろうか。

ところで気になったのは、万太郎が東京大学に持ち込んだ植物の標本のこと。一般に目にする植物の標本とちがって、台紙にきれいに貼られているのでもない、ただ古紙にはさんだだけのもののようだ。これには、採集者名(これは万太郎でいいのだろうが)も書いてないし、何時、どこで採取したものなのかの記載もない。果たしてこのような標本を持ち込まれても、植物学教室では困るだけではないだろうか。

これも、植物学教室の標本作製の手伝いをするシーンでは、万太郎は、標本の作り方を心得ているように描かれていた。ならば、自分の標本もしかるべく作っておく必要があるかと思うのだが、どうだろうか。

史実としては、牧野富太郎は、自分で集めて、あるいは、自分のところに集まった標本をきちんと整理するということはなかったらしい。(田中伸幸『牧野富太郎の植物学』による。)

さて、次週以降、東京大学での万太郎の活躍となるようだ。寿恵子との関係もどうなるだろうか。楽しみに見ることにしよう。

2023年5月20日記