『哀惜』アン・クリーヴス/高山真由美(訳)/ハヤカワ文庫 ― 2023-06-09
2023年6月9日 當山日出夫

アン・クリーヴス.高山真由美(訳).『哀惜』(ハヤカワ文庫).早川書房.2023
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015379/
これは傑作である。ちょっと気は早いが、今年のベストにおしたいという気持ちになる。
読んで感じることは、何よりも、英米のミステリの文学的芳醇さとでもいうべきものである。論理で読み解くミステリとしての出来も一級であるが、同時に、一つの小説として読んで非常にいい。人物の造形もしっかりしているし、扱ってあるテーマも、今日的なものを扱っている。だが、それも、人間、社会への理解ということでは、その深さに共鳴するところがある。
ただ、英国の宗教事情に詳しくないので、今一つ理解の及ばないと感じるところがあるのは、残念である。古風な宗教的環境と、近年の社会の潮流と、どう折り合いをつけて生きていくことになるのか、このところが、この小説の重要なポイントになるのだが、英国の宗教についてよく分かっていないので、どこまで理解できたかおぼつかないところがある。
それから、特に英国のミステリに顕著に言えることかもしれないが、警察官を主人公にした作品としても秀逸である。
余計なこととしては、この作品をきっかけに、学習障害や性的多様性などについて、社会の理解が広まればとも思う。
2023年4月25日記
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015379/
これは傑作である。ちょっと気は早いが、今年のベストにおしたいという気持ちになる。
読んで感じることは、何よりも、英米のミステリの文学的芳醇さとでもいうべきものである。論理で読み解くミステリとしての出来も一級であるが、同時に、一つの小説として読んで非常にいい。人物の造形もしっかりしているし、扱ってあるテーマも、今日的なものを扱っている。だが、それも、人間、社会への理解ということでは、その深さに共鳴するところがある。
ただ、英国の宗教事情に詳しくないので、今一つ理解の及ばないと感じるところがあるのは、残念である。古風な宗教的環境と、近年の社会の潮流と、どう折り合いをつけて生きていくことになるのか、このところが、この小説の重要なポイントになるのだが、英国の宗教についてよく分かっていないので、どこまで理解できたかおぼつかないところがある。
それから、特に英国のミステリに顕著に言えることかもしれないが、警察官を主人公にした作品としても秀逸である。
余計なこととしては、この作品をきっかけに、学習障害や性的多様性などについて、社会の理解が広まればとも思う。
2023年4月25日記
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