『流人道中記』(下)浅田次郎/中公文庫2023-06-17

2023年6月17日 當山日出夫

流人道中記(下)

浅田次郎.『流人道中記』(下)(中公文庫).中央公論新社.2023(中央公論新社.2020)
https://www.chuko.co.jp/bunko/2023/02/207316.html

下巻である。

浅田次郎の作品、特にその時代小説において顕著なテーマとしては、武士、正義、ということがある。この作品においても、武士とは何かと問いかけるところがある。武士とはなんであるか、今までの多くの時代小説で描いてきたところだと思う。そのなかにあって、浅田次郎の作品は、かなり特異な視点から武士について問いかけていると思う。このあたり、浅田次郎の武士観というようなことで、誰か論じていることなのかもしれない。私が知らないだけで。もし、まだそのような論考がないならば、これは考えてみる価値のあるテーマである。

それから、これは浅田次郎の時代小説に限らず他の作品でも言えることだと思うが、母ということがある。浅田次郎にとって母とはなんであろうか。この小説では、そう強く出てきているということはないが、随所に母とはどのような存在であるかと、問いかけるところがある。これもまた、興味のあるテーマである。

武士とは何か、この世の正義とは何か、母とは何か……浅田次郎の作品が、多く読まれるのは、このあたりの描写が、読者の心の琴線に触れるところがあるからであろう。

2023年6月12日記

「ヒューマンエイジ 人間の時代 第1集 人新世 地球を飲み込む欲望」2023-06-17

2023年6月17日 當山日出夫

ヒューマンエイジ 人間の時代 第1集 人新世 地球を飲み込む欲望

先週末の放送である。録画してあったのを後からゆっくりと見た。

確かにコストをかけて作った番組であることは分かるのだが、今一つ、メッセージが伝わってこない。

「人新世」ということは最近、言われるようになっていることは知っている。純粋に学問的な議論もあるし、政治的にそのような時代にあって、国際社会はどうあるべきかという議論もあるかと思う。

見ていて不満に思うことの一つは、例えば地球温暖化の問題にしても、具体的に責任のあるのは、欧米先進国は無論のことであるが、その他に、中国やインド、さらには、グローバルサウスの国々を含めて考えなければならない。一般論でものを言うのは自由であるが、具体的にどのように行動を起こすかとなったとき、これからの重要な役割をになうのは、中国であろう。はたして、中国共産党は人新世の時代にどうあろうとしているのか、このあたりが重要なポイントになるはずである。このあたりの議論を意図的に無視するのは、どうかと思ってしまう。

それから、歴史人口学の観点から言うならば、そう遠くない将来において、人類は減少する方向に向かうかもしれない。このままで人類が増え続けていくという前提も考慮に入れる余地がある。

ともあれ、この次の回も見ることにしようとは思っている。

2023年6月16日記