ザ・バックヤード「国立公文書館」2023-06-30

2023年6月30日 當山日出夫

国立公文書館であるが、私のようなちょっと古い書物を研究対象とするようなことをやってきた人間にとっては、内閣文庫と言われた方がわかりやすい。竹橋の毎日新聞社の近くにある。

学生に「デジタルアーカイブ」ということを教えていたことがある。そのとき、本来の「アーカイブ」とは何か、少し説明することにしていた。アーカイブ、あるいは、アーカイブズとも、この基本的概念は一通りは知っているつもりである。

まず、記録を残すこと。そのこと自体に価値がある。この意味では、近年、あいついで起こった、政府による公文書の改竄というようなことは、絶対にあってははならないことである。政府は、しかるべき記録のもとに仕事をする。そして、その仕事につては、きちんと記録を残さなければならない。絶対に、恣意的な廃棄とか改竄とかがあってはならない。

公文書管理についての基本概念が頭にあると、ニュースなどで、公文書の改竄のことが報じられるたびに、気持ちが落ち津化なかったものである。

今の元号「令和」が決まったときの、議事録は残っていないという。(これも国立公文書館が言うのだから、そうなのだろう。)

アーカイブは、原型保存(もとの形のまま残す)が原則である。文書類が、書庫の中で横にして積んであったのは、史料の保存のためということもあるが、それともうひとつは、もともとの状態が横に積んであったということにもあるはずである。

公文書のうち、いくつかは、デジタル化されてインターネットで見ることもできるようになっている。しかし、原本を保存しておくことの意味が変わるものではない。

2023年6月29日記

『街道をゆく 本所深川散歩、神田界隈』司馬遼太郎/朝日文庫2023-06-30

2023年6月30日 當山日出夫

本所深川散歩

司馬遼太郎.『街道をゆく 本所深川散歩、神田界隈』(朝日文庫).朝日新聞出版.2009
https://publications.asahi.com/kaidou/36/index.shtml

もとは、一九九〇年から九一年、「週刊朝日」連載。

「本郷界隈」につづいて読んだ。連載の順番からいうと、こちらの方が先になる。

本所深川あたりには、ほとんど土地勘がない。東京に住んでいるときも、隅田川を見たことはほとんどなかったと思う。

しかし、江戸から東京の歴史を考えるとき、この地域は重要である。

司馬遼太郎が、落語好きであるということを、この本を読んで初めて知った。随所に落語のことが出てくる。

神田は神保町のあたりが話しの中心となる。岩波書店のこと、岡茂雄の『本屋風情』のこと、反町茂雄のことなどが出てくる。神田が、明治から学校の街であり、それにともなって本の街になった経緯が興味深く綴られる。このあたりは、東京のなかでもよく知っている地域なので、面白く読んだ。

2023年6月29日記