『らんまん』あれこれ「オーギョーチ」 ― 2023-09-03
2023年9月3日 當山日出夫
『らんまん』第22週「オーギョーチ」
この週で描いていたことについて考えることは、いろいろと難しい。
一つには、学問とナショナリズムということがある。私は、ナショナリズムを一概に否定することはしない。ただ、そのあり方について常に自覚的であるべきだとは思っている。
帝国大学の学問は、国家の威信をかけておこなわれており、国益に資するものでなければならない。これを今の価値観から批判的に見ることは簡単かもしれない。だが、実際にはかなり難しいところがある。
少なくとも、近代国家として体裁を整えつつある段階にあった日本において、このような発想を全面的に批判することは、やはり正しくないだろう。その時の国のあり方、社会のあり方、国際関係のなかでの日本の立場、いろいろなものが総合したところに、学問の営みもなりたつ。
このような側面があることは確かだが、その一方で、純粋に知的営為としての学問ということもあり得る。
この両者のバランスは、その時代や国際情勢によって変わりうるものである、というのが私の認識である。
第二に日本語ということ。現代の日本語学研究の立場からすると、近代になって日本語を国語として確立していった過程については、批判的に考えるむきが強い。日本国内においては、方言の否定ということであり、また、外地においては日本語の強制ということがあったことになる。
とはいえ、そのような歴史があるとしても、その結果として、今日の一般的な日本語の書き言葉、話し言葉が成立していることも確かなことである。このことの成果についても、考慮すべきだと私は思う。
ただ、日本国内においても、いくつかの方言は絶滅危惧の状態にあることも事実である。はたして国家と言語とのかかわりはいかにあるべきか、まだ問題の渦中にあると言っていいだろう。
とりあえずは、以上の二つのことを思ってみる。
ドラマの作り方としては、明治という時代における学問のあり方を考えることにつながっていると考える。こういうテーマは、あまりドラマで扱われることのないものだと思うので、これは貴重な作品と言っていいだろう。
また、台湾語が出てきたのは珍しい。一般には、台湾は中国語の国と思われているかと思うが、言語研究の立場からみれば、台湾は多言語国家である。少なくとも、日清戦争の後、日本が支配するようになったころの台湾は、多くの先住民がおり、多様な言語がつかわれ、そのなかに台湾語もあった。おおむね私はこのように理解している。(きちんと調べたということではないのであるが。)
次週以降、綾と竹雄も出てくるようだ。寿恵子も商売を始めるらしい。植物学者としての万太郎がこれからどうなるか、楽しみに見ることにしよう。
2023年9月2日記
『らんまん』第22週「オーギョーチ」
この週で描いていたことについて考えることは、いろいろと難しい。
一つには、学問とナショナリズムということがある。私は、ナショナリズムを一概に否定することはしない。ただ、そのあり方について常に自覚的であるべきだとは思っている。
帝国大学の学問は、国家の威信をかけておこなわれており、国益に資するものでなければならない。これを今の価値観から批判的に見ることは簡単かもしれない。だが、実際にはかなり難しいところがある。
少なくとも、近代国家として体裁を整えつつある段階にあった日本において、このような発想を全面的に批判することは、やはり正しくないだろう。その時の国のあり方、社会のあり方、国際関係のなかでの日本の立場、いろいろなものが総合したところに、学問の営みもなりたつ。
このような側面があることは確かだが、その一方で、純粋に知的営為としての学問ということもあり得る。
この両者のバランスは、その時代や国際情勢によって変わりうるものである、というのが私の認識である。
第二に日本語ということ。現代の日本語学研究の立場からすると、近代になって日本語を国語として確立していった過程については、批判的に考えるむきが強い。日本国内においては、方言の否定ということであり、また、外地においては日本語の強制ということがあったことになる。
とはいえ、そのような歴史があるとしても、その結果として、今日の一般的な日本語の書き言葉、話し言葉が成立していることも確かなことである。このことの成果についても、考慮すべきだと私は思う。
ただ、日本国内においても、いくつかの方言は絶滅危惧の状態にあることも事実である。はたして国家と言語とのかかわりはいかにあるべきか、まだ問題の渦中にあると言っていいだろう。
とりあえずは、以上の二つのことを思ってみる。
ドラマの作り方としては、明治という時代における学問のあり方を考えることにつながっていると考える。こういうテーマは、あまりドラマで扱われることのないものだと思うので、これは貴重な作品と言っていいだろう。
また、台湾語が出てきたのは珍しい。一般には、台湾は中国語の国と思われているかと思うが、言語研究の立場からみれば、台湾は多言語国家である。少なくとも、日清戦争の後、日本が支配するようになったころの台湾は、多くの先住民がおり、多様な言語がつかわれ、そのなかに台湾語もあった。おおむね私はこのように理解している。(きちんと調べたということではないのであるが。)
次週以降、綾と竹雄も出てくるようだ。寿恵子も商売を始めるらしい。植物学者としての万太郎がこれからどうなるか、楽しみに見ることにしよう。
2023年9月2日記
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