「戦時体制と流行歌〜笠置シヅ子&服部良一〜」2024-02-02

2024年2月2日 當山日出夫

木村多江の、今さらですが… 戦時体制と流行歌〜笠置シヅ子&服部良一〜

NHKのなかにもかなり天邪鬼な人がいるということが分かる。

『ブギウギ』は確かに朝ドラとして好評である。ドラマは、笠置シズ子、服部良一、淡谷のり子などを軸に描いている。その時代は、戦前から戦後の、戦争の時代であった。その時代背景と音楽の関係を、簡潔にまとめてある。それを、『ブギウギ』をなぞりながらも、異なる視点で見ている。

ブルース、ジャズ、スイング……これらの音楽用語について、簡単に語っていた。ただ、このなかで使っていなかったことばがある。黒人ということは言っていなかった。アフリカ系アメリカ人、と言っていた。用語においては、PCである。しかし、私は、ジャズの歴史を語るとき、黒人の音楽という視点が重要と思っている。黒人の抵抗の音楽である、と思っている。

アメリカ南部において、スペインやフランスなどの音楽が混在していた、そこからジャズが生まれたということは、興味深いことである。

一九五五年生まれの私にとって、ジャズは、FM東京の深夜番組、「アスペクト・イン・ジャズ」と切り離すことができない。ほぼ毎週聴いていた。翌朝、起きるのがつらかったのを憶えている。(今、その番組に関する資料は、由井正一の資料として、慶應義塾大学のアート・センターにあるはずである。)

『東京ブギウギ』を服部良一が作るにあたって、アメリカのアンドリュー・シスターズ(軍服を着て歌う女性三人のグループ)が歌った「ブギ・ウギ・ビュークルボーイ」にヒントを得ているものである。これは、アメリカの戦争のときの、戦意高揚のために歌われた歌である。その楽譜を服部良一は、一九四二年ごろに入手して、戦後になってから、『東京ブギウギ』で使った。

番組のなかで、以前の朝ドラ『エール』の古関裕而のことにも触れていた。ただ、軍歌ということばで言ってしまうのはどうかと思う。ここは戦時歌謡という方がいいのではなかったか。軍歌とは日本だけのものではないし、また太平洋戦争当時だけのものでもない、というのが私の思うところである。

2024年1月31日記

フランケンシュタインの誘惑「鎮痛剤 オピオイド・クライシス」2024-02-02

2024年2月2日 當山日出夫

フランケンシュタインの誘惑 鎮痛剤 オピオイド・クライシス

オピオイド、あるいは、オキシコンチンという薬のことについては、知らなかった。ニュースなどでも目にした記憶がない。日本では、そう大きく報道されることがなかったということだと思う。また、同様のことが日本では起こりえないだろう……医療用の鎮痛剤の管理の厳格さ、ということもあるのだろうが。

FDAが一端許可してしまったものは、とどめることができないということになる。その背景には、それで利益を得ようとする製薬会社の動きがある。(このあたりは、分かりやすい構図なのだが、医療、製薬、医薬品の流通というシステムが、様々にからまってのことなのだろう。)

一社が特許を持っている間はどうにかコントロール可能かもしれない。しかし、特許が切れれば、制御は簡単ではないということだろう。また、そのような薬が製造可能であるという情報は、今の時代、簡単に世界にひろまる。

番組では言っていなかったが、今、アメリカで流通しているオピオイドは、どのような製造、流通のルートがあるのだろうか。そして、それは、他の麻薬類と、どのような関係があるのだろうか。

ともあれ、鎮痛剤を求める患者が多くいることは確かであるので、医療が対応する必要はあるにちがいない。しかし、そこで、中毒性のある鎮痛剤が違法に流通することは問題である。ただ、製薬会社が利益に目がくらんだ事件ということだけではなく、社会において麻薬を求める人びとがいること、それで利益を得る組織があること、このことが基本にあるのだろうと思う次第である。

2024年1月30日記