フランケンシュタインの誘惑「タスキギー 史上最長の人種差別実験」2024-02-26

2024年2月26日 當山日出夫

フランケンシュタインの誘惑 タスキギー 史上最長の人種差別実験

正直に言ってこの事件のことは知らなかった。アメリカでクリントン大統領が実験の被験者たちに謝罪したのだが、これをニュースで見たという記憶はない。

このタスキギー梅毒実験については、医学関係者には知られていることなのかとも思う。検索をかけてみると、東京大学医学部の研究倫理支援室のHPなどが上位に出てくる。

https://ohrs-u-tokyo.jp/ethics/

一般に医学研究における倫理とは何であるかということがある。そして、この事件の場合には、そこに人種差別があってのことだったことが、もう一つの論点である。

第二次政界大戦の前に始められた研究であるが、そのスタートの時点、その時代の状況を考えれば、このような実験があってもやむをえなかったのかもしれないと思う余地は感じないでもない。無論、倫理的には、その時代にあっても人体実験は非倫理的ではあったはずである。ただ、医学ということを考えるならば、なにがしかの人体実験、あるいは、それい類する行為は、不可欠なのかもしれないとは思う。だからこそ、研究は倫理的でなければならないと同時に科学的でなければならない。

タスキギー実験については、倫理的に問題であったことは無論であるが、科学的なデータとしてどれほどの知見が得られたのか、そこも問題だと思う。(科学的に厳密な統計データを取るためであるならば許されるということにはならないが。)

少なくとも、ペニシリンの効果が確認された時点で、実験を継続すべきかどうかの判断がなされるべきだったとは思う。治療法が分かっているのに、実験をつづける意義はどこにあると考えたのだろうか。

さらに問題なのは、この実験が問題視されるようになったのは、公民権法が成立してからのことだということもある。そして、アメリカ政府として正式に謝罪したのは、さらに年月がたってからになる。

番組であつかっていた黒人看護師の女性、おそらくは善意からの行動だったと思われる。人間は、善意によって行動すればそれで良いということには必ずしもならない。人間はどうあるべきかという観点からみて、非常に考えるところのある事件である。

2024年2月23日記

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