「木枯し紋次郎VS必殺仕掛人 〜時代が求めたアウトローたち〜」2024-03-26

2024年3月26日 當山日出夫

アナザーストーリーズ 木枯し紋次郎VS必殺仕掛人 〜時代が求めたアウトローたち〜

一九七二年、私は高校生であった。たまたまであるが、テレビの「必殺仕掛人」の最初の回を見た。印象にのこっているのは、緒形拳と林与一の対決シーン。なぜ刀を止めた、おまえが針をとめたからだ……こんな台詞であった。このところ、NHKは前半の部分しか放送しなかったのが残念である。(どうでもいいことだが、おなじような台詞のやりとりは、白土三平の「カムイ伝」にもある。「必殺」のプロデューサーであった山内久司氏にこのことを直接聞いてみたことがある。たまたま同じ大学で教えていたことがある。その返事としては、「必殺」の方が先であったということだった。)

「木枯し紋次郎」の監督が市川崑ということなのだが、「必殺仕掛人」の監督は深作欣二であったことになる。これは面白いはずである。(実際、どれほど現場にかかわったのかという気もしないではないが。)

その始まりのナレーション……木枯し紋次郎、上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれたという……は、いまだに憶えている。

市川崑監督の『股旅』は見た。たしか紀伊國屋ホールだったと思うのだが、どうだったろうか。見てみると、「木枯し紋次郎」の後に『股旅』を作ったことになる。

映像的にこれら両作品はすぐれているのだが、音楽もいい。それまでの時代劇にはない斬新なものだった。「木枯し紋次郎」の「だれかが風の中で」を歌ったのは、小室等。(この曲は、今、私が自動車のなかで聞くことにしている音楽のなかにある。CDをMP3にして、USBメモリにいれたものであるが。)後のことになるが、必殺シリーズの音楽、西崎綠の歌った「旅愁」は今も記憶にある。

「木枯し紋次郎」「必殺仕掛人」は、ともに小説が原作になっている。笹沢佐保の「木枯し紋次郎」は、そのほとんどを読んだかと憶えている。大学生になってからだろうか、文庫本でまとめて刊行されたのを読んだ。見てみると、「木枯し紋次郎」は、今でも読める。特に、創元推理文庫でミステリ作品としてのアンソロジーも刊行されている。「必殺仕掛人」は、池波正太郎の原作である。これは今でも文庫本で読める。読んでみると、テレビの「必殺仕掛人」は、かなり原作から変わっている。

記憶では、「木枯し紋次郎」は、週刊誌連載のときから、社会の話題になっていた。学校の授業で、先生がこの小説のことについて言及していたのを憶えている。たしか、「あっしにはかかわりのねえことでござんす」の台詞について、今はこんなことばがはやっているらしいが、君たちはもっと社会のことに関心を持たなければならない、というような文脈だったかと憶えている。

時代背景として、政治の季節の終わり。七〇年安保の終わり。浅間山荘事件。連合赤軍事件。これらのことは憶えている。また、その後、田中角栄が総理になったときのことも、記憶にある。言われてみれば、たしかに、このような時代背景のもとに、これらのドラマが制作され、ヒットしたという説明は、なんとなく理解できる。大映が倒産したのも、高校のときのことだったことを思い出した。

内田樹の言っていたことは、半分は納得できる。まあ、確かにあの時代、完全無欠のヒーローというものには、共感できない時代になっていたかと思う。人間は、だれでも何かしら汚い部分がある。だが、そのなかに人間性もあり、その残された人間味で世の中がなんとかなっている。こんな感じの世の中だったかと思う。

ただ、これからの時代について、新しいつながりをもとめて共同体を構築していく必要がある、というあたりは、内田樹の持論かと思うが、私は必ずしも賛成できない。その新しいコミュニティの理念が、過剰で過激な「正しさ」として圧迫感を感じる人びとが多くいるという側面を見る必要があるだろう。

それから、テレビ時代劇で思い出すのは、「用心棒」シリーズ。島田順司とか左右田一平が出ていた。アウトローを描いた傑作時代劇だと思うのだが、今ではもう憶えている人は少ないかもしれない。

2024年3月23日記

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