「全米が推理!お嬢様は殺人鬼? 〜未解決130年 リジー・ボーデン事件〜」2024-11-28

2024年11月28日 當山日出夫

ダークサイドミステリー 全米が推理!お嬢様は殺人鬼? 〜未解決130年 リジー・ボーデン事件〜

わりと最近の放送を録画してあったのを見た。番組のHPでは、今年の四月の放送である。このときは見逃していたことになる。

このダークサイドミステリーは、面白いと思って見ている。ただ興味本位で過去の事件のことを探して番組に作ったというだけではなく、その過去の事件が今にいたるまで、どのように人びとに受容されて受け継がれてきたか、その変化に歴史的背景を読みとっていこうという着眼点は、いいものだと思っている。この事件の場合、アメリカのメディア史、女性史という観点から、考えることになるだろう。

私は、この事件のことは知らなかった。今の日本なら、あるいは、アメリカでも、起こって不思議はない。今のアメリカだったら、斧で打ち殺すのではなく、銃を使うことになるだろうけれど。

やはり興味深いのは、一三〇年まえのアメリカの東部の街の人びとの価値観。良家の令嬢が殺人などするはずがないと考える、裕福な白人男性の陪審員たち、ということになるだろうか。また、その土地の近隣の人たちにとっては、殺人犯かもしれない女性が身近にいることへの忌避感もあったと思われる。

それが、その後、アメリカ社会のなかで、その時代ごとの価値観……特に女性の生き方や権利をめぐって……の変化に応じて、さまざまにこの物語が消費されていくことになる。これはこれで、非常に面白い。

まあ、今の日本では、NHKの朝ドラや大河ドラマが、過去の作品をふりかえると、制作された時代のさまざまな価値観や問題点を反映したものになっているということに似ているかもしれない。(「MeToo」がなければ、『虎に翼』もなかっただろう。)

最近の映画で、ボーデン家の主人がメイドを性的に暴行したので、という解釈であったのは、まさに、現代の価値観からである。(その当時、アイルランド系のメイドに性的に暴行があったとしても、目くじら立てるほどのことはなかったかとも思うのだが、今の社会では、このようなことを表だって語ることも禁忌とされるようになってきている。)

それにしても、この事件のあった邸宅がホテルで営業できて、そこにお客がやってくる、というのも、いかにもアメリカらしい……必ずしも近代的で合理的な考え方ばかりではない……という意味で、これも面白い。

YouTubeで「リジー・ボーデン」で検索してみると、いっぱい情報が出てくる。こういうのが好きな人が、今の世の中には多いということである。検査結果には、世界三大未解決事件(何がそれに該当するかはいろいろみたいだが)、ということが出てくるのは、人間というものは時代や社会が変わっても、そう変わることはないものなのだな、と感じるところがある。

2024年11月26日記

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