『カムカムエヴリバディ』「1962」2025-01-26

2025年1月26日 當山日出夫

『カムカムエヴリバディ』 「1962」

最初の放送のときは、お正月をはさんで、安子編から、るい編に変わったのだが、それを連続して放送すると、すこしギクシャクした感じになる。が、とりあえず、週のまとまりで見て、思うことなど書いてみることにする。

クリーニング屋で働き始めたるいは、弁護士の男性と知り合う。結局、この男性とは映画を見にいっただけで終わってしまうのだが、その傷心のるいが、たまたま入った喫茶店で、トランペットを吹くジョーの姿を目にすることになる。このあたりのはこびは、とてもたくみだと感じる。ちょっとだけの登場に終わってしまった弁護士さんだが、そう残念な気持ちにもならない。うまい役どころであったと感じる。

クリーニング屋にやって来ていた男性が、トランペット奏者であることを知り、ジャズ喫茶の、Night and Day からのクリーニングの注文をひきうけることになる。結果として、るいは、その店に足をはこび、ジョーと馴染みになっていく。このあたりの筋の運びも、自然である。

特に波瀾万丈の事件が起こったということではないのであるが、クリーニング屋の夫婦のるいを見る目があたたかい。また、ジャズ喫茶にあつまる客たちとの人間関係も、興味深いものになる。

印象に残っているのは、時代劇のシーン。モモケンの映画である。これから、このドラマで大きな役割をになうことになる存在である。この殺陣のシーンが、本格的に作ってある。おそらくは、『オードリー』で描いた、この時代の時代劇映画のことをふまえて、それへのリスペクトとして作ってある。切られ役が、松重豊だった。そして、るいが若い弁護士と行った映画が、黒澤明の『椿三十郎』というのも、『オードリー』を意識してのことだろう。これと併行して、O・ヘンリーの短篇「善女のパン」が劇中劇で出てくるのだが、これも見ていて面白い。パン屋の店員の女性と、るいの気持ちが、うまく重ね合わさっている。

ジャズ喫茶の Night and Day でのジョーのステージのシーンもいい。

るいとジョーが一緒に入ったレコード店のなかに、渡辺貞夫のポスターがあったのは、まさに視聴者へのサービスというべきだろうか。(私ぐらいの年代だと、夜のFM放送でよく聴いたものである。)

ところで、るいはジョーが演奏した、On the Sunny Side of the Street について、どこかで聴いたことがある曲だとは分かるのだが、聴いたときにはっきりと思い出してはいなかった。ふりかえれば、これは、岡山の定一の喫茶店で、ルイ・アームストロングのレコードを、母親の安子と一緒に聴いていたことになる。そして、その店のなかには、トランペットの少年もいた。だが、ドラマでは、まだこのことについては何も触れていない。

ジョーは、るいのことばをきいて、岡山のことばだと判断している。

小さなエピソードがたくみにからまりつみかさなって、このドラマは進行していことになるのだが、それが早すぎもせず、遅すぎもせず、特に難解ということでもなく、説明的にもなりすぎず、このあたりのバランスが、非常にうまくつくってあると感じることになる。

2025年1月24日記

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