『あ・うん』「(4)「弥次郎兵衛」」2025-02-08

2025年2月8日 當山日出夫

『あ・うん」 (4)「弥次郎兵衛」

先に、このドラマをもとにした小説の『あ・うん』を読んでいるのだが、それぞれに良さがあると感じる。小説の方が、より客観的な視点で描いている。ドラマは、語りが娘のさと子に設定してあることもあり、どちらかといえば、さと子の感情の流れを細やかに描いていると感じる。おそらく、さと子の気持ちについては、作者の向田邦子の経験を反映したものかとも思うことになる。少なくとも、戦前の時代の中流階層の人たちのなかの若い女性の感覚を描こうとしている。

ドラマは四回までで終わっている。千吉と水田の奇妙な友情は、その後、どうなるのだろうか。このドラマは、時代背景をほとんど画いていないが、歴史としては、太平洋戦争となり、その後の戦後の時代を迎えることになる。これからの激動の時代に、千吉と水田、それから、妻のたみ、娘のさと子、水田の妻の君子、二号さんの禮子、これらの人びとはどうなるだろうか。さと子の恋のゆくえはどうなるか。いろいろと想像することになるが、これは見る者の想像力にまかされることになる。小説版でも、向田邦子は、戦後のことまでは描いていない。

やはり、このドラマは、向田邦子しか書けなかったものだと感じるところが多い。特にさと子の心情を、今の作家は、これほど細やかに実感をこめて描くことは、もう無理だろう。

2025年2月6日記

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