映像の世紀バタフライエフェクト「映像の世紀×AI ヒトラーの隠された素顔に迫る」2025-03-27

2025年3月27日 當山日出夫

映像の世紀バタフライエフェクト 映像の世紀×AI ヒトラーの隠された素顔に迫る

エヴァ・ブラウンがプライベートに撮影していたフィルムは、これまでも、「映像の世紀」シリーズで何度か見ている。それが、かなり長時間におよぶものであり、また、ヒトラーは、権力の座にあったときの、相当の時間を山荘ですごしていた。ヒトラーにとっての、プライベートな時間であり、これは、エヴァしか撮影することのできないものであった。

なぜ、ヒトラーはエヴァにひかれたのか。残った映像で見ると、そんなに飛び抜けた美人というわけではないし、官能的な魅力を感じるということもない。ごく普通の若い女性という印象である。(まあ、今では、女性に対してこのような言い方をすること自体が、ルッキズムとして批判されることにはなるが、歴史的なことについて語る場合は、こういう言い方をしてもいいだろう。)

権力の座にあったヒトラーとしては、そのごく普通の雰囲気が重要であったということになるだろう。エヴァの妹の結婚式のパーティーは、ドイツの敗北のなかでおこなわれたことになるが、強いていえば、ここでヒトラーがもとめていたのは、ありふれた日常生活であった(それは、当時の多くのヨーロッパの人びとの生活とはかけはなれたものではあったが)ことになるだろう。

番組のなかで、まず登場していたのが、主治医のモレル。ヒトラーが、薬物中毒であった、ということになる。残された注射の記録からは、そのように判断していいのだろう。ただ、それが、ヒトラーの判断力にどう影響していたかは、推測するしかないことになるだろうが。

彫刻家のアルノ・ブレーカーが側にいたことは、若い時に、芸術、建築を夢みていたヒトラーの気持ちの表れということになるのだろう。

外科医のカール・ブラントは、事故や事件にそなえて側にいたことになる。そして、この人物が、障害者などの安楽死をおこなった。その全権をヒトラーから与えられていた。

このようなことは、AI技術による顔認識によることになる。人間の目で見ていれば、私の目で見ると、ヒムラーとかゲッベルスぐらいなら、それとすぐわかるが、その他の人物は、とうていわからない。専門家が見ても、分からないことが多いだろう。

このようなAI技術の応用によって、記録フィルムに、誰がどこで映っているのか判明することが多くあることになる。これは、おそらく、歴史についての見方や、記録映像の価値、史料批判、ということに、大きな影響を与えることになるだろう。

同じようなことを、日本の記録映像、ニュース映像などについて使うことになるならば、見えてこなかった歴史の一面が分かるということがあるかもしれない。文書史料による歴史研究に、あるいは、新たな方法論として、利用されるようになるかとも思われる。

特に、読唇のAIの開発は、映像資料の利用に、新たな局面をもたらすにちがない。この技術を、悪用しようと思えば、いろんな悪いことに使えるにちがいないとは思うけれど。(この技術を逆につかえば、自然に話しをしているディープフェイク映像が作れることになる。)

この番組では言っていなかったが、山荘でのヒトラーの姿を映したエヴァのフィルムが、カラーフィルムであったことは、この時代としては、どう評価することになるのだろうか。また、この当時の、カラーフィルムの撮影や現像の技術は、どんなものだったのだろうか。技術的なことだが、解説があると、より分かりやすい。

当時のカラーフィルムの感度で撮影できたということは、屋外の非常に明るい場所であったということは、言っていいだろうと思うが。

この回はヒトラーをあつかっていた。山荘のヒトラーの映像から見えてくるのは、ごく普通の生活感覚を持った人間である。なにごともなければ、売れない画家ですごすことになったかもしれない。普通の生活感覚のなかで、障害者の安楽死政策があり、ホロコーストがあったことになる。これが、もっとも重要なことになると、私は思う。おそらく、19世紀前半のアメリカでは、普通の日常生活の感覚で、黒人奴隷について語られ、インディアン(と言っておくことにするが)についても語られていただろう。スターリンについても、同様である。さらには、同じことが、今の世界で話題になる政治家についても、言っていいかと思う。それが、時代の歴史の流れのなかで、どのように思考して、行動することになるのか、時として大きな(飛躍的な)はたらきをすることになる。歴史とはそういうものであり、人間とはそういうものである、と言ってしまうと、あまりにシニカルにすぎるだろうか。

2025年3月25日記

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