NHKスペシャル「新ジャポニズム 第4集 DESIGN 世界を魅惑する“和”の魔法」2025-04-10

2025年4月10日 當山日出夫

NHKスペシャル 新ジャポニズム 第4集 DESIGN 世界を魅惑する“和”の魔法

個々の話題は面白いのだが、全体としては、いやこの回にかぎらず、「新ジャポニズム」の企画自体が、ニッポンすごい、でしかないように思える。ここから先の展望があまり見えないのである。

ランドセルが、アメリカで人気であるとしても、では、これから日本の産業としてランドセル製造が重要な意味を持つものになるかというと、そうとは思えない。

将来性があるのは折り紙の工学的な利用。二次元の紙から、三次元の立体物を作るというのは、数学的にも興味のある分野だろうし、また、工学的にもこれからの応用が期待できるにちがいない。だが、これは、ただ、折り紙が日本の(いつぐらい前からあるのかは知らないが)古くからの伝統と意識されるものである、という域を出ない。日本から、折り紙の理論を構築して、様々な産業分野への応用をこころみるというのは、期待できるかとも思うが、まだまだこれから先のことだろうと思う。

民藝について、柳宗悦をもちだすのは、分からなくはない。しかし、重要なことは、民藝の背景にあったはずの、前近代的な生活のスタイルや意識、価値観、風習、社会のあり方……これらは、現代では、封建的な遺物ということで、これまでに、あらゆる場面で否定され続けてきたことである。それを今さら復活させようとしても、かなりハードルが高い。

強引な言い方になるかと思うが、地方にいる女性がその土地に居着かず、都会をめざす。しかし、だからといって、成績優秀な学生が東京大学をめざすということでもない。このあたりの事情、日本社会のなかの前近代的な宿痾とでもいうものが、指摘されている。このような状態をのこすのか、改善していくのか、このような議論と、民藝の手作業を継承していくということとは、つながる問題であると、私は思う。

岡山のデニム工場で使っていた織機は、TOYODAとあった。豊田佐吉のながれをくむ豊田自動織機の作ったものということだろう。古い機械を使い続けることも大事だろう。と同時に、これを、現在のテクノロジーで、どうやって再現できるのか、というチャレンジがなければ、将来は見えない。機械は、いずれ壊れる。織機が壊れたら、デニム産業が終わってしまう、ということであってはならないはずである。

折り紙の技法で服を作るというのは、とても興味深いことではあるのだが、肝心なのは、その素材となっている生地をどうやって作るのか、ということである。どのような原材料を、どう加工すれば、スチームをあてるだけで変形するのか。(あるいはこれは秘密なのかとも思うが)この素材の研究開発こそが、もっとも重要なことかもしれない。はたして、ここに日本の大学や企業の研究が活かされているということであるのだろうか。私は、ここのところが最も知りたい。

2025年4月1日記

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