『八重の桜』「八月の動乱」2025-06-02

2025年6月2日 當山日出夫

『八重の桜』「八月の動乱」

私の思うところでは、『八重の桜』での松平容保(綾野剛)が、他の作品の誰よりも印象に残るところがある。武士なのだが、武士らしくない感情をうまく表現している。忠誠心が、この場合には、孝明天皇に対してのものになっている。これは、もうほとんど、(あまりいいことばが思いつかないが)盲目的な恋愛感情に近い。

だからということもあるのだろうが、このドラマにおいては、あまり女性が活躍しない。無論、主人公は、八重であるのだけれども、今のところ会津の自分の家でくすぶっているだけである。活躍することになるのは、会津戦争においてであり、その後、京都に舞台が移ってから、同志社を設立するあたりになる。ここで、ようやく八重の女性としての側面(?)が表現されるようになる。

この意味では、『八重の桜』の前半においては、松平容保が大きな位置をしめる。孝明天皇と松平容保の関係は、ほとんど恋愛感情に近いと言ってもいいかもしれない。両者とも、非常に女性的な人物造形になっている。いわゆる男性的な猛々しさという部分がまったくない。

こうなると、武士としての忠誠心などは、どうでもよくなってしまう。その結果として、戊辰戦争での会津の悲劇と続くことになるので、会津藩にとっては、よくよく貧乏くじの殿様にあたってしまった(というのは言い過ぎかとも思うが)となるかもしれない。容保の朝廷への忠誠心と、八重たち会津藩の人びとの、藩への忠誠心、これが、ドラマのなかで違和感無く融合しているところが、このドラマの面白さといっていいかと思う。

2025年6月1日記

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